FRB、物価圧力緩和を確認 利下げには一層の確信必要=議事要旨

Howard Schneider

[ワシントン 3日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が3日公表した6月11─12日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、当局者は米経済が減速しているもようで「物価圧力が弱まっている」という認識を示ししつつも、利下げに踏み切る前に様子見姿勢を維持したい考えを示していたことが分かった。

議事要旨では、インフレ低下を裏付ける「製品と労働市場におけるいくつかの動向」の1つとして、5月の消費者物価指数(CPI)が予想を下回る伸びになったことを挙げたほか、数人の参加者が賃金の伸び鈍化を指摘。他の参加者も小売大手による値下げや各地域の企業からの「価格決定力が低下した」との報告について言及したという。

それでも、当局者は議事要旨で「インフレが2%の目標に向かって持続的に鈍化しているという確信を強める追加情報が出てくるまで、フェデラルファンド(FF)金利の目標レンジ引き下げが適切になるとは想定していない」とした。

6月のFOMC前に発表された4月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年比2.7%上昇で、議事要旨によると、当局者はPCE価格指数が依然として「高水準」にあり、前回会合以降も「わずかな」改善にとどまっていると判断。経済が減速し物価圧力が弱まっているようにみえても引き締まった金融政策を継続する必要があるとした。

5月のPCE価格指数は前年比2.6%上昇に鈍化した。

議事要旨によると「大部分の参加者は経済活動の伸びが徐々に鈍化してきているようだと評価し、大半の参加者は現在の政策スタンスが経済に対して制約的だと見なしている」として、景気と物価上昇をさらに抑制する可能性が高いとの見方を示した。

6月のFOMCではFF金利の誘導目標は5.25─5.50%で据え置くことが決定された。議事要旨によると「参加者はインフレ抑制の進展が昨年12月に想定したよりも緩やかだったことを指摘」した。「一部の参加者」は利下げを開始する前の忍耐が必要だと強調し、「数人」の参加者はインフレが再燃した場合にはさらに利上げする必要性を挙げた。

JPモルガンの米国チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏はメモで、インフレ低下につながる要因が多数あるとし、議事要旨は「ハト派寄り」と評価した。

パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェパードソン氏は、議事要旨はFRBが経済に対する見方に「独断的ではない」姿勢を示しており、今後のデータの変化に迅速に対応する態勢が整っているようだと指摘。

「FRBは引き続き利下げ着手を急いではいないが、われわれの予想通り雇用の伸びが鈍化し、インフレが引き続き緩和すれば、考えは急速に変わる」とし、雇用の伸びが同氏の予想通り低下すれば、FRBは多くの人が予想するよりもはるかに速いペースで、年末までに合計1.25%ポイントの利下げを実施すると見込んだ。

6月の会合後に示されたFOMC参加者による政策金利見通し(中央値)では、24年中の0.25%ポイントの利下げ回数が1回となった。3月19─20日のFOMC時点では年内に3回の利下げを見込んでいた。

7月30─31日に開かれるFOMCでも金利は据え置かれるとみられている。

<政策の移行>

議事要旨は雇用の鈍化リスクも指摘したほか、国民や投資家にさまざまな経済状況に対する備えを促す必要性にも言及した。

多くの当局者は政策に関する見解をまとめるための代替「シナリオ」について語り始めており、議事要旨ではそのアプローチが議論の中心に置かれている。

「参加者は今後入手されるデータ、変化する見通し、リスクのバランスに基づいて政策決定を行うことが重要だと強調した」という。

こうしたシナリオの中には雇用市場が予想よりもはるかに急速に鈍化するリスクが含まれる。

次回FOMCまでには6月の雇用統計、CPI、第2・四半期国内総生産(GDP)速報値などが発表される。

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