“大切なものが次々と奪われていく” 全国に推計3万5000人「若年性認知症」への理解を!《長崎》

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アルツハイマーなど、脳の疾患で起こる「若年性認知症」。

50歳で診断された長崎市の男性が、病気について知ってほしいと活動を始めました。

“同じ思い”をする人たちに 寄り添います。

▼思い出そうとすると頭が痛くなる病気

(支援センタースタッフ)

「認知症の普及啓発の講習会はどうでした?」

(田中 豊さん)

「研修会はよかったでしょう。あれ?きのう?。なんやったっけ。えっと、出てこない。なんやったっけ」

いつの出来事だったか、思い出すことができません。

半日前の記憶も忘れることがあるそうです。

長崎市の田中 豊さん55歳。

5年前、記憶障害の “若年性アルツハイマー型認知症”と診断されました。

(田中 豊さん)

「えっと、何か言ったよな。もう思い出せん」

病気と向き合う日々です。

(田中 豊さん)

「思い出したら頭が痛くなる。大事なことや必要なことが思い出せない時に迷惑をかけることがある」

▼楽しみは “写真撮影” そのワケは?

移動の際は 自転車を使います。運転免許証は去年、返納しました。

医師の助言に従い、1人での遠出は控え、5キロ圏内としています。

(田中 豊さん)

「自分がある程度、道に迷わないでちゃんと行き帰り往復できる距離ということで(決めた)」

認知症と診断される前から続けている “写真撮影”。

趣味のひとつで、日々変わりゆく季節の花や風景を撮り続けています。

(田中 豊さん)

「記憶に残る。撮っていれば自分の(記憶の)中から無くなっていても、ここに行ったというのが思い出せる」

18歳~64歳までにあたる若年性認知症の患者は、全国に約3万5000人いると推計されています。

平均の発症年齢は54.4歳。男性に多い傾向が見られるそうです。

▼「免許」「仕事」「マイホーム」積み上げたものが次々と奪われていく

田中さんは45歳のときに “ある違和感”が。

(田中 豊さん)

「(仕事は)クレーンを最初は扱っていた。クレーンを動かすときに、若干違う感じの動かし方になった。ある程度したら、また忘れてしまう。覚えていない感じになって、また同じことの繰り返し」

診断後も 体調をみながら仕事を続けていましたが、症状の進行に伴い、去年9月に退職しました。

(田中 豊さん)

「白い錠剤が認知症の薬、ドネペジル。こちらが補助の薬」

毎日、3回にわけて7種類の薬を飲んでいます。

去年、アルツハイマー病の新たな治療薬が発売され、保険適用の対象となりましたが。

(田中 豊さん)

「(年間)300万円くらいと聞いている。高額医療ということで、ちゃんと差額分は返してもらえるのはわかっているが、一時期でも1回10万円払うのは普通の人には厳しい」

障害者手帳を取得し、月に約10万円の手当を受けていますが、退職金を切り崩しながらの生活。

近く、引っ越しすることを決めました。

(田中 豊さん)

「引っ越しはしたくないのが本音。ただ住宅ローンやリフォームの金額が大きいので、月々の支払いを考えたら生活ができない」

▼一番怖いこと…家族との記憶がなくなってしまう

家族は 妻・さおりさんと2人の子ども。

さおりさんにも持病があるため、料理は、長女 優香さんが担います。

(長女 優香さん)

「一味も二味も違うから、普段生活しているうえでの刺激が(ある)。今からもっと大変なことになると思うから、その時に合ったサポートで変えようと思う」

(田中 豊さん)

「(家族は)一番身近だから、一番 忘れたくない。病気が進行していけば、それもなくなっていくのかと、ずっと考えていたらきりがない。怖い」

家族のサポートを受ける日々。

症状の進行を感じていて、毎日の出来事を忘れないよう、日記をつけ始めました。

こうした悩みを共有し、多くの人にも知ってもらおうと田中さんが始めたのが交流会です。

▼同じ悩みを持つ人を笑顔にしたい

(田中 豊さん)

「金井田さん、病気の調子はどう?」

話している相手は、54歳の時「若年性認知症」と診断された金井田 正秋さん 69歳。

(金井田 正秋さん)

「5年間は、7、8回怒ったり、徘徊したりがひどかった」

(田中 豊さん)

「講演活動は長崎市がメインなので、大村や熊本など他府県にも行って、話がしたい」

月に1回開いていますが、今後、県の内外に活動を広げていきたいと考えています。

(田中 豊さん)

「こういう病気なんだと広めたいとの思いでやっている」

また、先月から新たに始めたことも。

向かったのは、就労継続支援の事業所。

自宅にこもらず、外に出ようと週に3回ほど通い、野菜の苗植えや水やりなどを行っています。

(田中 豊さん)

「病気だからといって、ふさぎ込んで家にいるよりかは、ましだと思う」

”若年性認知症への理解を”

一人でも多くの人に知ってもらい、同じ思いをする人が笑顔になれるように。

願いを胸に、きょうも前へと歩みを進めます。

県は今年4月に、若年性認知症患者やその家族の支援体制を強化する「サポートセンター」を開設しています。

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