【県内で起業】挑戦を一体で応援(7月4日)

 アイデアをビジネスにつなげる動きが県内で活発化している。起業は地域経済を支え、雇用の創出、にぎわいづくり、社会の課題解決につながると期待される。一方で、円安、物価高、人手不足が創業間もない経営を圧迫している例もある。県、市町村、金融機関、商工団体による支援を強め、新たな挑戦を後押ししていきたい。

 県は表彰事業の「ふくしまベンチャーアワード」を設け、起業して10年以内か、起業を予定している個人や団体を顕彰している。2021(令和3)年度から2023年度までの応募は62件、74件、43件となっている。

 レストランと共有オフィスが併設された複合施設を駅前に設け、過疎地域の活性化を目指す取り組みは、食と職が溶け合う交流空間を創出する。中小企業の健康経営を支援したり、大学生の起業サークルと企業が連携して耕作放棄地を観光農園に再生したりする事業もあった。にぎわいづくり、人口減少対策、定住促進、若者や女性、高齢者らが活躍する場の確保など、いずれも地域の課題に目を向けたアイデアと言える。少子化の時代にあって地元のニーズに応える試みは、行政サービスを補う役割も果たす。

 中小企業庁が5月に公表した中小企業白書によると、29歳以下の起業者数は2022年が11万3千人で、5年前と比べて3万6千人増えている。若者による創業は全国的に増加傾向にある。

 県は、「ふくしまFターン起業相談会」を東京都内で開いている。昨年までの3年間で計65人が訪れており、起業の場としての本県への関心は高い。今年度は来年2月まで6回開く。新規事業や新産業の創出は全国の自治体共通の課題だ。本県の支援体制の優位性や付加価値を高めるなどして起業に着実に結び付けるよう求めたい。

 福島民報社主催のふくしま経済・産業・ものづくり賞(ふくしま産業賞)は今年、10回の節目を迎え、記念の「夢スタートアップ賞」を創設した。創業数年の企業や1年以内に開業予定の起業家など1者に贈り、とうほう地域総合研究所(とうほう総研)と県信用保証協会が経営面で1年にわたって伴走支援する。事業の安定や一層の飛躍に生かしてほしい。(古川雄二)

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