今年は梅不足

 この時季ならば、売り場に並んでいるはずの完熟の梅を近くのスーパーでは見かけない。買い物ついでに店員さんに尋ねると「今年は梅不足で値段が高いのでうちでは買えませんでした」と申し訳なさそう。
 そう言えば、青梅の袋売りも見かける期間がいつもより短かった、と今さらながら思い出す。全国の梅産地では、暖冬で開花が早まり受粉がうまく進まなかったことなどが影響して、不作になったという。収穫量日本一の和歌山県は前年の半分にまで落ち込んだ。
 6月初めに収穫を終えた日南市北郷町の北郷梅林園でも「まだ梅ちぎりはできますか」という問い合わせがあると聞く。へたを一つ一つ丁寧に取ったり、容器や赤ジソの準備をしたり。かなり手間のかかる梅仕事だが、梅を探し求めてでも仕込みたい人たちがいるのだろう。
 「祖母の遺(のこ)した赤じそ梅干しもカリカリ梅も、亡くなって10年たってもおいしくいただくことができました。時間という調味料が加わって、それはうまみのかたまりのようなものになっていました」。料理家の山田奈美さんが「旬を楽しむ梅しごと」で記すように、梅の加工品は時の変化も楽しめる。
 今年は、日の丸弁当の主となる米も不足気味で、一部で値上がりしている。農作物は天候に左右され、果樹には表年と裏年もある。地の恵みに感謝しつつ、三日三晩の土用干しのため、梅雨明けを待つ梅仕事人も多いはず。〈干梅の紅見れば旱(ひでり)雲 河東碧梧桐〉

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