紙幣20年ぶり刷新に沸く福島県内 野口英世千円札に惜別

お目見えした新紙幣。銀行には両替を求める市民らが訪れた=3日午前、福島市・東邦銀行本店営業部

 約20年ぶりに刷新された紙幣が発行された3日、福島県内でも新たなお札の顔やデザインへの注目度は高く、各地で盛り上がりを見せた。一方、長年親しまれてきた猪苗代町出身の野口英世千円札の発行終了に惜しむ声も聞かれた。

 福島市の日銀福島支店では午前8時から、県内の各金融機関への新紙幣の引き渡しが始まった。厳重な警備の中、約170億円分の新券が払い出され、担当者が車両に積み込んだ。

 午前11時。県内の銀行のトップを切り、東邦銀行が同市の本店営業部で両替を開始した。窓口営業時間の午後3時までに213人が訪れ、約1100万円分の新券と交換した。一番乗りで新紙幣を手にした福島市のパート吉田裕美子さん(70)は「20年ぶりの刷新は感慨深く、大切に使いたい」とほほ笑んだ。授業前に立ち寄った、ふくしま新世高3年の佐藤璃羽(りう)さん(17)は、「友達の間でも話題だったので、早速見せたい」と声を弾ませ、生まれて初めて紙幣の世代交代を体験した。

 一方、野口英世の千円札の発行が終了し、猪苗代町も節目の日となった。野口英世記念館によると、同記念館には県内外から「なぜ変わってしまうのか。残念だ」との電話が相次いでいるという。ただ、最近では「紙幣が変わる前に野口博士の業績を改めて知りたくなった」と記念館を訪れる入場者も増えている。同記念館の森田鉄平学芸課長(48)は「お札の肖像に選ばれる影響力の大きさを日々実感している。寂しい気持ちはますます強くなった」と惜しんだ。

 「最後の1枚」展示

 県は3日、最後に製造された旧千円札のうち1枚を日銀から贈呈され、今後、県立博物館(会津若松市)で展示すると発表した。県内では、同記念館を運営する野口英世記念会など4団体が連番で1枚ずつ受け取るという。3日に受け取った同記念館は4日から展示するとしている。

 便乗詐欺ご用心

 県警は、「旧紙幣が使えなくなる」などとうそを言い、新紙幣発行に便乗して現金をだまし取る詐欺への注意を呼びかけている。

 3日時点で詐欺事案は確認されていないが、担当者は「新紙幣になったからといって、旧紙幣が使えなくなるわけではない」と強調。電話などで新紙幣との交換を持ちかけるような話には特に注意が必要とする。県警は、POLICEメールふくしまやアプリなどを活用しながら啓発を強化するとしている。

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