成長早い真昆布、脱炭素に活用へ エフレイ、養殖試験公開

船上に揚げられる長さ3~4メートルの真昆布。最適な栽培条件を見極めるため、養殖試験を重ねている=岩手県大船渡市沖

 福島国際研究教育機構(エフレイ)がカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)先駆けの地を目指して実施する海藻の大規模養殖試験が3日、公開された。研究は成長の早い真昆布に着目し、単位面積当たりの生産効率をできる限り高める段階にある。エフレイは脱炭素と新たな液体燃料の製造、食料生産を見据え、福島県を海藻産業の拠点にする将来像を描く。

 試験場は岩手県大船渡市の綾里漁港から約2キロの沖合。長さ200メートルの親縄が海面に張られ、1.5メートル前後の間隔でロープが垂れ下がっていた。今年1月に長さ3~4センチの真昆布の種苗を取り付け、半年で100倍の3~4メートルに成長した。この高い成長力が真昆布の魅力だという。

 昆布は成長過程で大量の二酸化炭素(CO2)を取り込む。枯れて海底に沈めば数十~100年にわたってCO2を固定する。海藻は土壌や肥料が不要で、各国の研究機関が食料やバイオマスに活用するため技術開発を競っている。

 エフレイの矢部彰エネルギー分野長は、取材に「昆布は(海に炭素を蓄積する)『ブルーカーボン』の筆頭格になり、車や飛行機の燃料としても使える。大量生産し、福島の水産業振興を実現したい」と語った。

 一般に食用昆布の養殖は、品質を安定に保つため海面に張られた親縄に種苗を取り付ける。一方、生産性を重視するエフレイの研究では、通常の養殖では使わない水深10メートル前後まで漁場を拡大。親縄から垂らすロープの間隔や種付け方法など、条件を調整しながら試験栽培を重ねている。

 現在、狙った優良株の大量培養は難しいとされ、エフレイは高い水温でも大きく育つ株を選抜しつつ、陸上で種苗を生産する技術の確立も目指す。養殖試験の場は数年以内に福島県沿岸に移し、海藻生産の一大拠点を形成する計画だ。

 養殖試験は、研究を受託する理研食品(宮城県)が公開した。エフレイの研究公開は初めてで、山崎光悦理事長や食品、エネルギー関連企業などから計約60人が参加。産業化を前提とした意見交換会も開かれた。

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