桂ざこばさんも亡くなった「大人の喘息」掃除中に咳が止まらない、台風が来ると息苦しい人は要注意!

(写真:kaka/PIXTA)

「喘息で全然あきまへん、ハ~ァ。喘息あかんわ、ほんまに――」

歯に衣着せぬトークと人情味あふれるキャラクターで人気があった、落語家の桂ざこばさんが、6月12日に喘息のため、大阪府内の自宅で亡くなった。享年76。

亡くなる1カ月半前の会見で、自らの体調について弱気な発言をしていたざこばさん。

激しい咳や呼吸困難などを起こす「喘息」。一般的には、子どもに多い病気だと思われがちだが、じつは大人になってから発症するケースも少なくない。

「喘息は、空気の通り道である気管支(気道)が慢性的に炎症を繰り返し、気管支が狭くなる病気です。呼吸時に“ヒューヒュー、ゼーゼー”といった喘鳴が聞こえ、息苦しさや咳を繰り返します。重い発作が起きた場合、気道が塞がり窒息死することもあります」

こう語るのは、日本呼吸器学会専門医で、東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科の寺嶋毅教授。厚生労働省の人口動態統計によると、2022年の喘息による死亡者数は1004人(男性377人、女性627人)。このうち65歳以上の高齢者が約90%を占めている。

ここ30年間の統計では、1995年の7253人をピークに、死亡者数は年々減少。その背景には、吸入ステロイド薬などの治療薬が普及したこと。そして医療技術が進歩したことが大きいとされる。だが、それでも毎年1000人もの命を奪う、恐ろしい病気であることに変わりはない。

「子どもの喘息の場合、ホコリやダニ、ハウスダストなどのアレルギーによって起こる“アトピー型喘息”がほとんどです。一方、大人になってから発症する“成人喘息”は、アトピー型のほかに、風邪、インフルエンザなどの感染症をはじめ、たばこ、アルコール、さらにストレス、過労、肥満といった、アレルギー以外のさまざまな原因で引き起こされます」(寺嶋教授、以下同)

■「チアノーゼになって死にかけました」

厚生労働省の2020年「患者調査」によると、病院にかかっている喘息の患者の総数は179万6000人。成人(20歳以上)は123万人で、半数超の65万人が40歳以上の女性だった。

「女性の場合は“月経喘息”と呼ばれ、月経の数日前から症状が悪化することがあります。また喘息発症の要因の1つである、肥満による影響を男性よりも受けやすいのです」

じつは、実際の喘息の有症率はもっと多く、成人の10人に1人、約1千万人が喘息患者だという研究データもある。つまり、900万人近くの患者が、適切な治療を受けず、自分が喘息であることに気づいていない“隠れ喘息”だというのだ。すでに病院にかかっている患者と年齢分布が同じだとすると、500万人ほどが40代以上の女性だということに。これは40代以上女性の8人に1人に該当する。

「何日も咳が止まらないのに、風邪が長引いているだけだと思い込んで、病院に行かず放置したままでいると、重症化する場合もあるので注意すべきです」

そこで、自分が“隠れ喘息”かどうかをチェックするために、寺嶋教授に見逃しやすい16の症状を教えてもらった。

「とくに今の梅雨時季など、雨や台風による気圧の変化で息苦しくなったり、咳き込む人は隠れ喘息を意識したほうがいいでしょう。また、就寝後、深夜や明け方に咳き込んで目が覚める、エアコンの冷たい風に当たると咳が出る人も要注意です。

それから家の中を掃除しているときに咳が止まらなくなる人は、ホコリやダニ、ハウスダストなどのアレルギーに反応している可能性があります」

16項目中3つ以上該当する人は、“隠れ喘息”を疑い、病院で診察を受けたほうがいいという。成人喘息は、生活の質を著しく下げてしまう。

「39歳のときに発症。喫煙歴はありませんでした。医者からは過労とストレスが原因ではないかと診断されました。それから毎日12年間、起床後と就寝前の2回、吸入ステロイド薬を使用しています。

薬のおかげで突発的な重い発作は起きていませんが、就寝中に咳が止まらなくなることも。迷惑をかけるのが嫌なので、家族や友人との泊まりの旅行は行かなくなりました」(51歳・女性プログラマー)

命にかかわる経験をした人も。

「25歳のとき、重い喘息の発作からチアノーゼ(口唇、顔面、爪が青紫色ないし暗赤色を呈する状態)になって死にかけました。入院中も横になると咳が止まらなくなるので、座った状態で点滴を受けました。今も吸入ステロイド薬を使って、発作が起きないように毎日コントロールしています」(43歳・女性ライター)

成人喘息の完治は難しいといわれているが、適切な薬で治療を続けることで、普通に日常生活を送ることができる。ちょっとでも“隠れ喘息”の疑いを感じたら、自己判断で放置せず、早めに受診することだ!

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