田中みな実の“カリスマ性”が持つ説得力 『ギークス』では“らしさ”を生かした役柄に?

7月4日より放送開始となる松岡茉優主演の『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系/以下、『ギークス』 )。本作は、頭は切れるのに人間関係に難アリな警察署勤務の女ギークたちが、週末の井戸端会議で事件解決をスーパーアシストしてしまうという新感覚の謎解きエンターテインメントだ。

松岡、滝沢カレンと共に3人の女ギークたちを演じるのが、35歳の産業医・吉良ます美役を務める田中みな実。田中といえば、ここのところ、完璧主義だからこそ周囲に弱みを見せられず煮詰まっていく役どころが続いていたように思える。

『Destiny』(テレビ朝日系)では、主人公が巻き込まれていく一連の事件の大きなきっかけを作ることになる大学時代の同級生・カオリ役を好演。男女5人の親友グループの支柱的な存在であるからこそ、彼女が就活の壁にぶち当たったり、好意を寄せる相手に振り向いてもらえなかったことが、そのままグループの雰囲気に大きく作用するような影響力の大きさを見せつけた。

皆から羨望の眼差しを向けられる対象であるものの、本当に欲しいものは手に入らない“満たされなさ”を抱えているカオリからはどんどん不穏な空気が滲み始め、車を運転して暴走するシーンでは田中の鬼気迫る演技が光っていた。

『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)でも、周囲からは理想の夫婦だと羨まれる夫(岩田剛典)がいるファッション誌の副編集長・楓役を見事演じ切った。仕事に没頭するバリキャリながらも、お洒落でセンスがよく隙がない。理想の自分になるために努力し続けられるひたむきさは、「田中みな実愛用品」と銘打たれたコスメやスキンケア商品が飛ぶほど売れる、世の女性たちを牽引する圧倒的な“カリスマ力”を持つ田中だからこそ、説得力を伴って演じられた役柄だっただろう。

夫とのレス問題を見て見ぬ振りしていたものの、冷え切った夫婦関係を誤魔化しきれなくなり、追い込まれていく様子が非常にリアルだった。自分と目を合わせて話そうとしてくれない夫、自身から遠ざかっていくその背中に素直にすがることもできず、届かない声に後悔や懺悔が滲む。

職場では圧倒的なオーラを放ちながらシャンと背筋を伸ばし多くの部下を率いて仕事を捌いていく楓が、すっかり自分から離れてしまった夫の気持ちを前にすると手も足も出ないという非対称さに彼女の人間臭さが滲み出ていた。いずれのキャラクターも嘘がつけず、真面目で不器用でどこか一面にとびっきりのピュアさを持っており、そのアンバランスさが魅力的だった。

今回『ギークス』で演じるのは、「人の心を見透かす医務室の魔女」という異名を持つ心理分析のプロという新たな役どころ。『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日系)のMC時代に見せた軽妙なトークや観察眼、洞察力という田中本人の“らしさ”が生かされる役柄にも思える。

松岡の公式Instagramで滝沢の誕生日会を開催したことが報告されたり、7月1日に放送された『グータンヌーボ2スペシャル』(フジテレビ系)でも息の合った3人の掛け合いが見られたが、気負わないキャラクターに扮する田中の新鮮な姿に期待したい。
(文=佳香(かこ))

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