パリ五輪に臨む大岩ジャパンのメンバーにオーバーエイジ3人が選ばれず、鈴木彩艶(シント=トロイデン)と松木玖生(FC東京)が落選した現状を受け、思い出したのが日本代表の森保一監督の言葉である。
大岩ジャパンがパリ五輪出場を決めた後、Jリーグの試合(FC町田ゼルビア対柏レイソル)を視察した森保監督は次のようにコメントしていた。
「五輪はIW(インターナショナル・ウインドー)の開催とは違うので、選手の招集はかなり難しい。移籍が絡むケースは予測がたっていれば交渉できますが、移籍先が分からない状態だとなかなか…。オーバーエイジを含め最強チームを作っていくと大岩(剛)監督は考えると思いますが、その交渉は簡単ではありません。日本の総力を上げての交渉が必要です」
実際、松木選外の理由は「移籍」だった。山本昌邦ナショナルチームダイレクター(ND)は思い通りにメンバーを選べない現状をネガティブに捉えず「今後世界のクラブとどうコミュニケーションをとって選手を招集できるのか。これは五輪だけでなく、U-20の世代でも同じことが起きています。そういう時代になったという日本サッカーの明るさだと捉えております」と話した。
ちなみに、選ばれた18人は怪我や体調不良以外は変更不可。つまり、移籍交渉をするためにチームを離脱したい選手が出ると、追加招集はできなくなるわけだ。そういう背景もあって、松木は選外となったのだろう。
山本NDが言うように、移籍市場で日本人選手が注目されているからこそベストメンバーが組めない現状は日本サッカーの成長とも捉えることができる。ただ、パリ五輪でメダルを獲得できるかどうかはまた別の話だ。オーバーエイジでフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)らを招集したアルゼンチンと比べても、ややパンチに欠けるスカッドだ(そもそもアルゼンチンと比べてはいけないのだろうが)。
U-23アジアカップの優勝メンバーが中心とはいえ、その大会の決勝でウズベキスタン相手に大苦戦した事実を忘れるべきではない。本大会になればウズベキスタンよりも手強いチームを倒さないとメダルには届かないはずで、そう考えると、明るい展望は描きにくいか。
いずれにしても、森保監督の懸念は現実のものになってしまった。
文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集部)