中国吉林省の辺境村、「トイレ革命」経て人気の観光地に

中国吉林省の辺境村、「トイレ革命」経て人気の観光地に

吉林省延辺朝鮮族自治州にある光東村の風景。(2023年8月、ドローンから、長春=新華社配信)

 【新華社長春7月4日】中国東北部の吉林省延辺朝鮮族自治州に、「トイレ革命」を契機として各種のインフラ整備を実現し、人気の観光地となった村がある。インターネットで評判を高め、観光業の盛り上がりで村民の増収も実現している。

 美しい田園風景の中に、朝鮮族の特色ある農村の民泊施設が並ぶ光東村。夏の観光シーズンを迎え、またにぎわいを見せ始めている。施設の敷地はコンクリートで整備され、清掃が行き届き、訪れる観光客が後を絶たない。

 「部屋はほぼ予約で埋まっている。ディープな体験をするため、南方のお客さんも数多くやってくる」。同村帰心民宿専業合作社(協同組合)の楊麗娜(よう・れいな)理事長は語る。かつては考えることもできなかったことだ。「ここに滞在しようという人など誰もいなかった」と当時を振り返る。

中国吉林省の辺境村、「トイレ革命」経て人気の観光地に

観光客でにぎわう光東村。(2023年10月撮影、長春=新華社配信)

 ある村人は「かつては屋外のくみ取り式トイレしかなかった」と打ち明ける。観光客など来るはずもなく、出稼ぎに行った村の若者すら帰ってきたがらなかったという。

 変化のきっかけになったのは、2015年に同村がトイレ改造の試験地点に選ばれたことだ。政府による主導と農家の希望に基づき、農村世帯の全面的なトイレ改造が行われた。「たかがトイレと思ってはいけない。実際にやってみると一大プロジェクトだ」。同村党支部の金憲(きん・けん)書記は語る。トイレの改造は水道、電力、環境保護など各分野に関わる。住民の提案も十分に聞き入れる必要があったという。

 「トイレ革命」は決して順風満帆ではなかった。当初は、三つの槽に分けたタンクを民家の敷地に埋め、順を追って発酵、沈殿することで浄化と滅菌を実現する「三槽式」を採用した。だが屋内でトイレが利用できるようになっても村人たちは満足しなかった。金氏によると、延辺地域は冬の気温が非常に低い上、地下水の水位も高いため、凍結や詰まりが起こりやすく、臭いが上がってくることがよくあった。

中国吉林省の辺境村、「トイレ革命」経て人気の観光地に

修学旅行で光東村を訪れた生徒たち。(2023年10月撮影、長春=新華社配信)

 試験地点だった同村はこれに懲りることなく、19年にトイレ改造に再チャレンジ。下水管を集中的に敷設するとともに、小型の下水処理場を建設し、問題の解決を図った。これを機に農家にも洋式便器や給湯器が設置されるようになった。

 同村の変化は、中国が農村で展開する「トイレ革命」の縮図と言える。国土が広大で、南北の気候差が大きく、経済的な条件も異なる中国では、それぞれの土地に合った方法を取ることが「トイレ革命」を成功させる鍵になる。吉林省はすでに十数種類のトイレ改造モデルを編み出しているという。

 中国農業農村部のデータによると、全国の農村における衛生トイレ普及率は昨年、73%を超えた。農村住民の生活の質はますます高まっている。

 同村はトイレの改造後、朝鮮族の特色ある観光の発展に取り組み、巨大な田んぼアートや観光用トロッコ、洗練されたカフェなどの観光資源を開発。インターネットで人気を集め、昨年同村を訪れた観光客は延べ59万6700人に達した。村人の多くが空いていた家屋を民泊経営のために旅行会社に貸し、年間1万元(1元=約22円)近くの増収を実現している。(記者/邵美琦)

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