超「売り手市場」高校生の就活が解禁 求人倍率は約4倍 「令和の金の卵」争奪戦 IT業界などからも期待

今週から、高校生の就職活動が事実上、解禁されました。

現在、高校生の求人倍率はバブル期をも上回り、超「売り手市場」となっています。「令和の金の卵」とも呼ばれる、いまの若者を企業が欲しがる理由とは?

■高校生の就職活動が事実上スタート 過去最高となる有効求人倍率は約4倍

3日、大阪府堺市の工業高校を訪ねると、ひっきりなしに電話が鳴り、先生たちは大忙し。

7月1日から、高校生の就職活動が事実上スタートし、対応に追われています。

高校生の就活では、生徒を採用したい企業側が高校に出向き、労働条件を示した求人票を手渡しすることが一般的です。

(Q.求人票は何枚ぐらい?)
【大阪府立堺工科高等学校 鈴木浩二教諭】「(用紙の束を見せ)こんなにですよ。きのうの昼からいまの時間までで、これだけの会社数が来ている状態ですね」

およそ20年前には、卒業間近にもかかわらず就職先が決まっていない高校生が、わずかな数の求人に詰めかけるなど、厳しい環境だった「高卒就職」。

しかし、ここ数年でその求人倍率は、劇的に変化。

ことし3月に卒業した高校生については、3.98倍と過去最高の数値を記録していて、バブル期を超える超「売り手市場」となっています。

背景には、高卒で就職する人数の減少があるのではと、高校生の就職活動をサポートする企業は分析します。

【ジンジブ 森隆史専務取締役】「いわゆる少子化、18歳人口の減少と大学進学率が増加していってるところ。最近では、“令和の金の卵”といわれるが、真っ白で素直なところ、とてもハングリー精神のある子たちも多いので、そういった高校生を魅力に感じ始めている企業は多いのではないかと思う」

「令和の金の卵」を求めて、すっかり、企業と高校生の立場は変わってしまったようで…。

【企業担当者】「休みが多くて、社内の雰囲気も働きやすい。あと給料が良いというのが売りで」
【大阪府立堺工科高等学校 鈴木浩二教諭】「お預かりします。ありがとうございます」

【大阪府立堺工科高等学校 鈴木浩二教諭】「授業との合間にどうやったらいいか、申し訳ないけど短時間にしてくださいって。うれしい話なんでね。不景気なときは、僕らが会社に行ってお願いしますって。今は来ていただけるから、うれしいですけどね」

電気工事や機械設計などの専門知識を勉強できる堺工科高校では、およそ8割の高校3年生が就職を希望しています。

就職活動に向け、面接の練習などを行い、着々と準備を進めています。

【担任】「まず、好きな教科を教えてください」
【高校3年生】「好きな教科は数学です」

就職希望の高校生は、どんな企業を目指しているのでしょうか?

【高校3年生】「(高校では)実験とか普通の高校ではできないことをやっていて、それが面白いと感じているので、実験とかする会社に就けたらと思っています」

【高校3年生】「僕は生産業に就きたいなと思ってます。大学より就職をしたい。お金を稼いで、親に返すのは大事かなと思って」

■若いうちから経験を 建設業界ではSNSで発信など採用活動の工夫

中でも、高校生の争奪戦となっている業界の1つが、「建設業界」です。

大阪市淀川区に本社を置く三和建設で、建設現場の現場監督として働くのは、高卒2年目の社員・澤菜津美さん(19)です。

この会社では、大卒でも、高卒でも、業務に違いはありません。そのため、少しでも若いうちから経験を積める高卒の人材が重視されているのです。

【三和建設 澤菜津美さん(19)】「一時期は進学するのと迷ったんですが、私は働きながら学びたいなと思って」

(Q.澤さん仕事ぶりは?)
【澤さんの先輩】「よくできますよ。何言うても分かるし。期間短いわりには、成長が早いと思います。大卒の子よりもよくできます」

三和建設ではそんな高校生を確保するため、若者に身近なSNSで発信するなど、採用活動の工夫をしています。

(Q.高卒の取り合いはありますか?)
【三和建設 森本育宏執行役員】「あるでしょうね。給料もそうでしょうし、先生や親御さんが知っている企業に行かせたがりますね。われわれがどう魅力を伝えるのかは課題です」

19歳の澤さん、現場での仕事において年齢の差は関係ないと話します。

【三和建設 澤菜津美さん(19)】「いろんな年齢で入社している人がいると思うんですけど、高卒やからとか、大卒やからとか関係なく、施工管理の1人として認めてもらえるように経験を積んで、いつかは1人で現場を任せてもらえるような人間になりたい」

■デジタルネイティブ世代が強みに IT業界が高校生の採用を開始

一方で、意外な業界でも、高校生の採用が広がっています。

【HawksMap橘充希さん(19)】「今はお客さまのシステムを、最適化するための開発をしています」

真剣な表情でパソコンと向き合うのは、橘充希さん・19歳です。

地図システムの開発などを行うこちらのIT企業では、おととしから高校生の採用を開始しました。

【ジンジブ 森隆史専務取締役】「(IT業界では)元々、高卒の求人数は1%もなかった。IT企業や、いわゆるホワイトカラー、スーツを着て仕事をするような、そういった求人も増えている」

IT業界で高校生に注目が集まる背景には、現代の若者が持つ強みがあるといいます。

【HawksMap畑尾一貴代表】「デジタルネイティブ世代なので、インターネットが当たり前にある時代。スマホも持っているのが当たり前。問題に当たったときに検索の仕方が、今めっちゃうまいなと思っています」

(Q.どういうふうに活躍したい?)
【HawksMap橘充希さん(19)】「エンジニアとしてはもちろんなんですけど、お客さんと直接話していいものを作っていけるようになりたいですね」

人気が高まる若い力が、今後、多くの企業を支えることになりそうです。

■高校生の就職事情ではミスマッチも 時代に合わせて制度の変更も必要か

IT業界でも高校生の採用が広がっているということですが、その理由を聞くと納得しますね。

【菊地幸夫弁護士】「いや驚きましたね。でも言われてみれば、そうなのかもしれませんね。いろんな資格で、資格を取るには大卒ですよとかいうのが、法令でも要求されていますが、そういうのを見直さなきゃいかんかもしれませんね」

今の時代、早くに離職する若者も増えていて、企業としてはそのあたりをどう防ぐか頭を悩ませるところだと思います。

【関西テレビ 神崎報道デスク】「実は高校生の就職は学校側が仕切っていて、いっぱい求人を受けた上で、県によって若干違いはありますが、1人に1社を割り当て、そこがだめだったら次の会社という形です。そうすると見比べる会社の数は、あまり多くないので、ミスマッチが起きます。今、求人倍率が4倍ぐらいって言われてるので、大学生のようにはならないかもしれませんけど、複数社を見て、受けてみて、その中で自分に一番合ったところはここだと選べれば、ミスマッチが解消できて、離職するのを防げると思います」

今の時代に合わせた就職に変えていく必要があるかもしれません。

【菊地幸夫弁護士】「アナログですよね。全部、紙を持ってって。今ネット社会で高校生も18で成人ですから、ネットで検索して『あ、この会社、この会社』と、こんなふうになったらいいなと思います」

自分らしい働き方の環境整備をできるような企業が、これからどんどん増えていくといいなと思います。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月4日放送)

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