能登半島地震で妻と子供3人亡くした男性…「頑張っている姿を見せられたら」思い出が詰まった”宝箱”と共に前を向く

能登半島地震で、妻と子ども3人を失った大間圭介さん。深い悲しみの中、半年をどのように過ごし今何を思うのか。

自分だけ与えられた命…生き残った父の思い

「きょうも仕事に行ってきました。特に仕事以外は無かったんやけど、きょうはとっても暑い日でした。夏が段々と近付いてきたな~って感じがします。今度の休み一緒にどこかに行けたらいいね。きょうも1日、生かしてもらってありがとう」

大間圭介さん42歳。話しかけているのは、妻はる香さんと長女優香さん、長男泰介くん、次男湊介くんの遺影だ。4人は元日の能登半島地震で亡くなった。毎日仕事から帰ってくると、その日あった出来事を報告するのが大間さんの日課だという。

大間圭介さん:
「毎日『1日生かしてくれてありがとう』って言うようにしています。みんなに自分だけ与えられた命というか頂いた命なので、生かされているのかなって思いで」

1人で祝う誕生日と結婚記念日

4月。大間さんの自宅を訪ねると、記者にあるものを見せてくれた。「見てください。かわいくないですか?」長女優香さんの顔が描かれた華やかなケーキ。この日、4月26日は優香さんの誕生日。大間さんのことを知った東京の洋菓子店が作ってくれたという。

大間さんが家族への毎日の報告以外に必ず行うのが誕生日と結婚記念日のお祝いだ。「華やかな誕生日会ができそうです」と言いながらスマートフォンで写真を撮る大間さん。しかし…

大間圭介さん:
「お祝いはしてあげてるんですけれど、やっぱり一人でバースデーソング歌ってると涙が止まらなくなる。本当はみんなで一緒にお祝いしたかった」

当時勤務していた珠洲警察署を離れ、現在は石川県警察本部で勤務している。仕事中は気持ちを保てるようになったというが、家に帰ると家族への思いが溢れる。

「妻と子どもたちがいなくなったっていう現実を受け入れていかなくちゃいけない。どれだけ時間が経っても戻ってこないんだなって思いが非常に強くなったというか。若干今でも夢を見ているような気がして。帰ってきそうな気はするですけれど…やっぱり帰ってこないんだなって思うと辛くなる」喪失感は日々膨らんでいる。

辛い中でも、大間さんはメディアの取材を断ることがなかった。家族のことを多くの人に知ってもらいたいから。そして、能登で今も一生懸命暮らしている人たち心を寄せて欲しいと思っているからだという。

地震から半年…見せてくれた”宝箱”

6月27日。地震の発生からまもなく半年がたつ中、再び大間さんのもとを訪ねた。リビングにはこれまで見たことがないケースが置かれていた。

大間圭介さん:
「自分の中で宝箱にしてて、自分に書いてくれた手紙とか。こういうのを取っておいて、宝箱を昔から作ってて『これを私が亡くなった時に棺桶に入れてくれ』という話は妻にしてて、ただどこにあるかは言ってなくて家の中にあるから探してくれって隠していた。こういうのを見ていると結構辛くなってくるんですけど、この前ふと宝箱を持ってきまして。」
記者:
「圭介さんの中で、ふと宝箱あったな、少し見てみようかなっていう向き合えそうな気がした?」
大間圭介さん:
「そうですね。基本的に(思い出が詰まった)色んな物ってあんまり見られないんですけど、ふと宝箱開けてみようかなと思って開けてみたんですよね」

「おとうさんいつもおもちゃかたづけてくれてありがと たいすけより」宝箱には子どもからの手紙や大間さんの似顔絵が入っていた。記者に見せた後、リビングの片隅に”宝箱”を戻す大間さんの後ろ姿に「結構重いですか?」と尋ねるとこう返ってきた。「軽いです」宝箱にはまだまだたくさんの宝物が入るはずだった。

それでも、大間さんは少しずつ前を向こうとしている。

記者:
「これからどういうお父さんを見せていきたいですか?」
大間圭介さん:
「頑張ってる姿を見せられたらいいなと思って、マラソンにエントリーしてみたりとかチャレンジしていこうかなという気持ちにはなっています」

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