『FNS歌謡祭』東方神起×中島健人、KIM CHAEWON×アイナ……音楽特番、日韓コラボに集まる注目

今年もこの時期がやってきた。7月3日に放送された『2024 FNS歌謡祭 夏』(フジテレビ系/以下、『FNS歌謡祭』)では、世代や国を越えてさまざまなアーティストがコラボステージを披露する企画が目白押しとなり、放送前からSNS上で期待が高まっていた。そんな中でも特に注目を集めたのが、日韓を代表するアーティスト同士のコラボレーションだ。そこで本稿では、当日のパフォーマンスを振り返りながら、日韓コラボに見る音楽シーンの今後の可能性を探っていく。

グループ卒業後、ソロとして活躍の幅を広げる中島健人は、かねてより大ファンだと公言していた東方神起とともに、東方神起の名曲「Stand by U」「呪文-MIROTIC-」をコラボパフォーマンスした。10代の頃から東方神起に憧れていたという中島は、2023年10月1日放送の『まつもtoなかい』(フジテレビ系)で東方神起と共演した際、「僕にとって東方神起は神様のような存在」と熱く語っていたが、今回の放送でも東方神起の魅力を司会の相葉雅紀に問われると、「圧倒的パフォーマンスもさることながら僕はもう人柄だと思っていて」「全方位にジェントルなお二人なので本当に大好き」と瞳を輝かせて熱弁。これを聞いた東方神起のユンホは「恥ずかしいです」と照れた表情を見せながらも、「歌やダンスが上手なのはもちろん、本当に真面目でハンサムで完璧」と中島の魅力を語っていた。

同年10月11日には、仕事で渡韓した際にチャンミン・ユンホと撮影したスリーショットを自身のInstagramに投稿していた中島だが、パフォーマンス直前には、中島が先日ソウルを訪れた時にはユンホだけでなくチャンミンにも会うことができたというサプライズ秘話も明かされた。ファンだけでなく画面の向こうの視聴者も、彼らの深い交流を知ることができる機会になったことだろう。

歌唱が始まると2人に挟まれる形で立ち、チャンミンとユンホと視線を交わしたり2人のパートも口ずさんだりしながら、「Stand by U」を噛み締めるように丁寧に歌い上げた中島。一方、「呪文-MIROTIC-」に切り替わる瞬間には目の色が一変し、激しくもクールな見せ場が光る同曲を見事に披露してみせた。どちらも安定した歌唱力とキレの良いダンススキル、そしてメッセージ性や歌詞の意図を理解した上での表現力が求められる難易度の高い楽曲だが、完璧に仕上げた姿に「これが中島健人か」と驚いた人も多かったのではないだろうか。

今回披露された「Stand by U」「呪文-MIROTIC-」は、東方神起が所属するSM ENTERTAINMENTをはじめ、K-POPグループが大切に歌い継いできたこともあり、東方神起のファンだけではなく、最近ではいわゆるZ世代にもリスナーを広げている楽曲だ。今回中島とのコラボで披露されたことにより、楽曲そのものがさらに広い層へ届いただけでなく、両者のファン同士が日韓音楽市場への理解や共感を一層深める良いきっかけになったように感じられる。

LE SSERAFIMのKIM CHAEWONとアイナ・ジ・エンドは、宇多田ヒカルの楽曲「First Love」でコラボ。アイナ・ジ・エンドは2019年にBiSHとして「First Love」のカバーステージを披露したことがあり、またKIM CHAEWONも2022年12月24日にYouTubeで「First Love」カバー歌唱動画を公開していた。

LE SSERAFIMとしては、今年春に行われた米最大級の音楽フェス『Coachella Valley Music and Arts Festival』に出演したKIM CHAEWONと、所属事務所 WACKの海外公演『WACK in the U.K.』でヨーロッパに初進出したアイナ・ジ・エンド。まさに“国を越えて活躍する”2人のコラボは一見異色にも思える。しかし、KIM CHAEWONがアイナ・ジ・エンドについて、「お会いしたことはなかったが、声がとても魅力的で素敵なアーティストの方だなと思っていた」と印象を語ったように、KIM CHAEWONの透明感ある歌声と、それに丁寧にハモるディテールを見せつつも個性を見失わないアイナ・ジ・エンドのハスキーで味のある歌声、2人の真逆の声のエッセンスが光るコラボになったのではないだろうか。アイナ・ジ・エンドは冒頭、KIM CHAEWONについて「会いたかったので本当に夢みたい」と話していたが、歌唱を終えてすぐに両腕を広げ、互いを称えるように笑顔で抱擁を交わした2人の姿には、人と人を繋げ得る共通言語としての音楽の力を感じることができた。

7月6日放送の『THE MUSIC DAY 2024』(日本テレビ系)では、NewJeans HANNIが松田聖子の「青い珊瑚礁」を、HYEINが竹内まりやの「プラスティック・ラブ」をソロパフォーマンスするほか、Snow Manの渡辺翔太とTOMORROW X TOGETHERのHUENINGKAIが優里の「ベテルギウス」をコラボカバーすることも予告されており、日韓アーティストの交流は引き続き熱量を増していきそうだ。今後のエンタメの可能性を広げる鍵は、互いの文化への理解とリスペクト、そして共生にこそあるのかもしれない。

(文=風間珠妃)

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