問い合わせの3割が中国人?日本の寺や神社がネットで「売買されている」 宗教法人ブローカー「一番売れるのは新興宗教」 取引・規制の実態は

問い合わせの3割が中国人?日本の寺や神社がネットで「売買されている」 宗教法人ブローカー「一番売れるのは新興宗教」 取引・規制の実態は

By ABEMA TIMES編集部

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「滋賀県 重要文化財の仏像あり 2億8000万円」「兵庫県 霊園付き 巨大な土地 4億8000万円」。今、インターネット上では神社や寺の売買が盛んに行われている。宗教法人ブローカーの山本隆雄氏(64)は、「宗教法人売買の定義は『代表役員の変更登記』であり、土地や建物はおまけだ」と語る。

【映像】ネットで公開されている寺や神社、驚きの販売価格一覧

山本氏のサイトでは、宗教法人資格のみの取引は3000万円から設定されている。売却には大きく2パターン。「高齢化して信者もいない、跡継ぎのいない寺。売りたい意思はないが、借金のカタで売られてしまう宗教法人」。こうした宗教法人の売買は問題視され、国会でも議論に。

宗教法人は、宗教活動で得た収入や、土地・建物の固定資産税、相続税などが非課税となっている。宗教法人の売買が行われる裏には、これを悪用して、脱税やマネーロンダリングをもくろむ人もいるという。『ABEMA Prime』では、宗教法人の売買の実態について、当事者と考えた。

■「寺も神社も売買できてしまう。新たに作るには10年、買った方が手っ取り早い」

浄土宗僧侶でジャーナリストの鵜飼秀徳氏は「高齢な住職が老後資金を捻出するために売買するケースもある」と説明した上で、「宗教法人の設立は、オウム真理教事件以降、許認可に時間がかかる。少なくとも数年から10年程度かかり、買った方が手っ取り早いのだろう」と、売り手と買い手の事情を話す。寺の売買には制約もあり「日蓮宗や浄土宗のような宗派に属していると、その規約に則って寺を運営しなければならない。しかし宗派を離脱すると、“単立”といって自由になり、比較的売買しやすくなる」と、宗派を抜けて売り出すケースが多いという。

現状では、宗教法人の売買を取り締まる法律は存在しない。文化庁は「宗教法人法では第三者が法人格を取得し宗教活動以外の目的に法人格を利用する事態をそもそも想定しておらず、このような行為は法の許容するところではない」と“脱法行為”との見解を示している。

■ブローカー「外国人が観光寺、納骨堂などビジネスをしたい人がいる」

売買の仲介役を務めている山本氏は、最近では「中国人が特に欲しがる」と実態を明かした。「自分たちが住むためや帰化するため、そして事業目的の人が多い。まともに『手を合わせたい』とかは、みんな思っていない」。今や問い合わせの3割は中国人で、ビジネスに使える「歴史ある日本の神社仏閣」を求める人が多いという。

土地建物が付いていない、法人格だけの取引を「ペーパー」と呼ぶ。「宗教施設に住んでいる人は、売ると出て行く必要が出るため、土地建物は自分名義に変えて、宗教法人格のみを販売する」。非課税となるのは「宗教活動による収入と寄付金だけ」だが、例えば数珠や集印帳などの物品販売業や駐車場の経営など「34業種の収益事業」も行うことができる。そして、抜け道と指摘される背景には「収益事業は税金を払う必要があるが、税率は安くなる」といった点があげられる。

山本氏のサイトで一番取引が多いのは「教派神道」だという。「新興宗教が多い。お寺は大体どこかに所属しているため、売り買いできない」が、宗派と関わりがない方が“身軽”に売買できてしまう。日本の宗教法人は、中国人に注目されているが、その理由はさまざまだ。「観光寺を作りたい人も、日本に住むのに使いたい人もいる。納骨堂や葬式などのビジネスをやりたい人もいる」。宗教法人の売買が、違法行為の温床になるとの指摘もあるが、「あまり気にしていない」と山本氏は語る。「売買自体は法規制されていない。脱法ではあるが違法ではないので、堂々とやったらいい」と、むしろ裏取引されていたと言われるものを表に出したメリットも力説した。

中国人が寺や神社を買う背景には、「多死社会を迎える日本において、葬儀&法要はビジネスチャンス」といった思惑がある。また、宿泊施設を併設するなど、観光地化をねらう人々もいるようだ。

■住職・神主が高齢化「管理できないなら国庫に返納すべき」「退職金を欲しい人もいる」

そもそも宗教法人の税優遇は必要なのか。鵜飼氏は「課税されると、あっという間に日本の寺や神社は全部なくなる」と指摘する。「宗教法人は、お坊さんや宮司さんのためではなく、社会全体のためにある。神社は檀家を持たず、お墓もなく、収入が限られているため、他の事業でお金を稼ぐしかない。本来であれば、管理できなくなった宗教法人は、法人格を国庫に返納するべき」と訴えた。

一方で山本氏は「やめたがっている人は、退職金としてのお金が欲しい」と説明する。「宗教法人の売買は、寄付金でお金をもらい、退職金としてお金を引き出す。スタンスとしては、取引は全て『寄付金』で、高額を出した『熱心な信者』が跡を継ぐ形になっている」。

文化庁の「宗教法人が行う事業に関する調査報告書」によると、宗教法人の数は2013年に約18万3000あったが、右肩下がりとなっていて2022年には18万を下回っている。

宗教法人の売買は規制すべきなのか。鵜飼氏は「法律で規制すべき」との立場を取る。その前段階として、各宗派で自由に売買できる「単立」化を防ぐよう対策を講じるべきだとの考え方だ。

現状の打開策として、鵜飼氏は「管理できない宗教法人は、地域の有力な寺社が合併する」ことを提案する。「単立化して、宗派から離脱する仕組みが良くない。各宗派の中で『離脱時の不動産は、宗門が引き受ける』といった仕組みづくりが必要だ」と、宗派全体で守るべきだと提案していた。

(『ABEMA Prime』より)

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