「繰り返される」オマーン戦の悪夢、「強くなった」東南アジアの脅威、ACLに「求められる」入れ替え【組み合わせ決定「ワールドカップ最終予選」の戦い方】(3)

前回予選でオマーンを率いて日本を倒したブランコ・イバンコビッチ監督(右)は現在、中国代表監督だが…。撮影:原悦生(SONY α9Ⅱ使用)

ワールドカップ・アジア最終予選の抽選が行われ、組み合わせが決まった。対戦相手のみならず、スケジュールが具体的になったことで、見えてきたものがある。いかに最終予選を戦うべきか。サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。

■日本戦に向けて「万全の準備を整える」各国

現在の日本代表のチーム力を考えれば、一つひとつの試合に対して細心の注意を払って準備していけば、予選突破の2位以内はおのずから見えてくるはずだ。

もちろん、それぞれの試合は楽なものにはならない。

対戦相手はランキング上位の日本に対して、さまざまな対策を講じてくる。極端に守備を固めてくる国もあるかもしれないし、思い切ってロングボールを蹴り込んでくるかもしれない。そして、彼らは日本戦に向けて合宿を行って万全の準備を整えてくる。

一方、日本の選手たちは各クラブで週末の試合を終えてから長距離移動を経て集合し、戦術的な練習もほとんど行えないまま、木曜日の試合に臨まざるをえないのだ。当然、コンディションが良いはずはない。

4年前のオマーン戦がまさにそうだった。

オマーンはヨーロッパで長期合宿を行い、試合の1週間前には日本に乗り込んで調整を続けており、試合直前に集合した日本選手よりはるかに良いコンディションで戦うことができたのだ。

そのときのオマーンの監督だったブランコ・イバンコビッチ監督(クロアチア人)が、現在は中国代表監督を務めているというので警戒する向きもあるようだが、オマーンと中国では条件は違う。

中国での報道を見ると、中国ではスーパーリーグ(超級聯賽)やカップ戦の日程の調整を図っているものの、日本戦を前にそれほど長期の準備期間は取れないとのことだ。

いずれにしても、一つひとつの戦いが難しい試合になるのは間違いないが、4年前に証明されたように、一つや二つ取りこぼしがあったとしても心配する必要はない。ホーム&アウェーで10試合を行えば、最終的に実力通りの順位に収斂していくのは間違いない。

■急成長を遂げた「中進国」インドネシアだが…

「アジアは強くなってきている」という人も多いが、本当にそうなのだろうか?

たしかに、たとえばインドネシアは、ほんの数年前までは東南アジアの中でもタイやベトナム、シンガポールの後塵を拝していたが、ヨーロッパ生まれでヨーロッパでプロとなったインドネシア系の選手を加え、韓国人の申台龍(シン・テヨン)の指導も相まって、急成長を遂げた。

だが、「東南アジアのトップになること」と「日本や韓国、オーストラリアを脅かすこと」との間には大きな隔たりがある。

インドネシアは国としても、最近は急激な経済発展を遂げて、最貧国ではなく、中進国(1人当たりGDP約1万米ドルの中所得国)となっている。だが、そこからが難しいのだ。

これまでにも、中南米諸国や東南アジア諸国でも中進国まで発展しても、その後、成長曲線が鈍化してしまうケースが数多く見られた。その後も経済成長を続けて先進国の仲間入りに成功したのは韓国やシンガポールなど、ごく一部の国だけなのだ。

そして、世界銀行はこの現象を「中進国の罠」と呼んだのだが、サッカーの強化でも同じようなことが言える。

今大会でもやはり、僕は「5強」の予選突破は間違いないと思っている。もっとも、グループCではどこか1か国がプレーオフに回ることになるのだが……。

■日本とバーレーンの「合意」で対戦順を逆に!

ところで、先ほども述べたように、9月のバーレーン戦は非常に過酷な環境の中での試合となる。日本にとって厳しい条件なのはもちろん、冬のオーストラリア戦から帰国した直後のバーレーン選手にとっても過酷な条件であることは間違いない。とても、内容の良い試合など期待できない。

それなら、対戦順を変更すべきなのではないか。

たとえば、日本ホームのバーレーン戦は2025年の3月20日に予定されている。ホームとアウェーを入れ替えて、3月にバーレーンで試合を行えば、とても良い環境で試合をすることができる。

バーレーンにとっても、9月シリーズではオーストラリアから本国に帰るより、日本まで移動して日本ホームでの試合をしたほうが時差調整が不要になるので楽なのではないか。

もちろん、開幕直後の9月にホームでの連戦となるので日本が有利になりすぎるかもしれない。だが、日本とバーレーンで合意すれば、対戦順を逆にできるようにすべきだろう。

ワールドカップ・アジア予選は、広大で地域によって気候も区々なアジア大陸を舞台に行われるホーム&アウェーの厳しい戦いだ。だとしたら、アジア・サッカー連盟(AFC)には、各国の気候条件などを考慮したスケジュール作りをする義務があるように思うのは僕だけではないだろう。

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