「1歳の息子が車に閉じ込められた」炎天下の駐車場でとっさの判断 救助の男性が迷わずとった行動とは 富山・南砺市

炎天下のショッピングセンター駐車場で、1歳の男の子が車の中に閉じ込められました。男の子を降ろそうと母親が車を出たわずかな時間に、男の子がスマートキーを誤って触りカギをかけてしまったのです。エンジンは止まり冷房もなく、車内はサウナ状態。母親から助けを求められた男性がとった行動は…。

五十嵐央也さん:「いらっしゃいませ」

2022年8月7日の午後、富山県南砺市のホームセンターで店長を務めていた五十嵐央也さんは、勤務中に思いがけない出来事に遭遇します。

助けを求める母親:「助けてください、息子が車に閉じ込められました」

ホームセンター隣にあるショッピングセンターの駐車場。1歳の男の子が車に閉じ込められました。

五十嵐さん:「勤務中に、他の従業員から『男の子が閉じ込められたらしい』と、急いで工具を探しました…」

母親が後部座席から男の子を降ろそうとした際、男の子が手に持って遊んでいたスマートキーで誤って鍵をかけてしまったというのです。

母親はすぐに警察に通報。さらに、一分一秒を争う事態に近くのホームセンターにも助けを求めたのです。

当時の南砺市は一日を通してほぼ雲のない晴れ、最高気温は33.2℃。車内はエンジンが切れ冷房も止まっており、まさにサウナ状態。消防によりますと車内は40℃近くと予想され、救出に時間がかかっていれば、熱中症になっていたおそれがあったといいます。

知らせを受けた五十嵐さん、しかし車の窓をこじ開ける専用道具など、あるはずもなく…。

とっさに、店の備品を手にすると…

とっさに、店の備品だったT型スクリュードライバーと金づちを手に車に駆け寄ります。そして、後部座席にいた男の子とは反対方向の運転席側に…。

五十嵐さん:「ここ(運転席の窓ガラス)にドライバーと金づちをあてて割りました、最初にヒビが入ったので、そこから割って、なかに手を伸ばしてドアの鍵を解除しました」

どの窓ガラスを割れば…五十嵐さんの判断は

男の子は運転席の後ろの後部座席にいました。運転席の窓ガラスを割ったのは、飛び散ったガラスが男の子に当たらないようにしたためだといいます。

五十嵐さん:「とっさの判断でしたが、(ガラスを割ることに)ためらいはなかったです。お母さんからも『ありがとう』と声をかけていただきました。その場ですぐ助けることができてよかったです」

まさに、五十嵐さんの迅速な行動が男の子の命を救うことにつながりました。

この救出劇が、あと数分遅れていたら…。
車内の急激な“気温上昇”がどれほど危険か、「目で見てわかる」実験画像があります。

JAFが行った実験です。実験を行った日の気温は32℃、車内の温度は27℃です。

10分も経たないうちに車内の温度は35℃に。そして、20分後には…。40℃に達しました。体温を超えて人体に危険な影響を及ぼすレベルです。

一方、日陰に停めた場合も…、30分後には車内の気温が35℃に達しました。

これは熱中症指数(WBGT)31を超えた、熱中症の「危険レベル」に値します。日陰に停めたとしても「少しの間なら」「寝ているから」と、子どもやペットを車内に残すことはとても危険です。

南砺消防署第2課 篠原正之課長(当時):「そのまま救出が遅れれば、もしかしたら子どもさんが熱中症になったりとか、大変な事案になっていたと思います。我々が到着する前にはすでに男性によって子どもが助けられていたと聞いておりますので、勇気ある行動だったと思います」

思った以上に多い…鍵を車内に置いたままロック

鍵を車内に置いたままロックしてしまうトラブルは、思った以上に“よくあるトラブル”です。JAFによりますと、同様のトラブルで出動した件数は、富山県だけでも2021年1年間に1000件以上もあったといいます。

五十嵐央也さん:
「命を救えたと言われると、いいことしたのかなと。大きいことしたのかなと思いますね。こういう形で地域に還元じゃないですけど、地域の役に立てている。それがまたよかったのかなと思います」

このとっさの判断に敬意を表して、五十嵐さんには南砺消防署から感謝状が贈られました。
(この記事は2022年と2023年の取材をもとに再構成しています)

こうした“炎天下の駐車場”でのSOSだけでなく、日々の暮らしの中には「なんでここに…」などといった“違和感”と、一歩踏み出す“とっさの判断”が万が一の事態を防いだ例があります。

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