「座りすぎ」が招く心身不調…経済損失は6兆円超、オフィス対策は重要

オフィスの対策は重要

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「座りすぎ」がもたらす悪影響は、個人の健康だけではない。「座りすぎ問題」を研究し続け、多くの企業とも連携している岡浩一朗教授(早稲田大学スポーツ科学学術院)は座りすぎが日本経済に与える損失についても危惧している。

「20歳から69歳までの日本人1万人を対象にして、プレゼンティーズム(心身の不調)の実態を調べた2020年のデータがあります。それによると、首の痛み・肩こりによる1人あたりの経済損失は約4万5000円で、国全体にすると約3兆1000億円にも上る。同じく腰痛は約3兆円の損失でした。他にもメンタルヘルスや眼精疲労による損失も大きい。そして、これらの問題はすべて『座りすぎ』と関連しているんですよ。これをほったらかしたままでいいのか、ということです。座りすぎ対策を実施すれば、その多くは解消できると私は考えています」

厚労省が年初に発表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(成人版・こども版)」でも、岡教授が携わって「座りっぱなしの時間が長くならないように」と推奨している。また、WHO(世界保健機関)も2020年に座りすぎ対策のガイドラインを発表するなど、世界的にも座りすぎ問題に目が向きつつある。

「でも私は、やっぱりこれは産業の問題だと思っています。特にオフィスで働く人の座りすぎ対策は重要です。企業が、働けば働くほど健康で元気になるオフィスをどう創造できるか、ですね。その中で、スタンディングデスクを含めた机や椅子はとても重要な役割を果たすと思いますし、今は数年前とは違い、座りすぎ解消のためのさまざまなツールやギアが生まれています。また、それに伴い、オフィスのレイアウト、照明、空調も関係してくる。未来のためにも、いろいろな企業が力を合わせて産業を創出できればいいなと思っています。私もそのために考えています」

岡教授はこう総括する。

「5年先、10年先に、『まだ座っているの?』という社会になっているのが理想です」(おわり)

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