お下品もギャグもお色気も…役に立たないけどなぜか試したくなる「ファミコンの裏技」

ファミコンソフト『スーパーマリオブラザーズ』(ふたまん+編集部撮影)

かねてからファミコン作品には数々の“裏技”が仕込まれてきたが、なかには攻略にはまったく影響を及ぼさない、いわば“お遊び要素”のようなものも数多く登場している。意味はないとわかってはいても、ついついやってしまう裏技の数々を振り返ってみよう。

■そのコミカルさから公式も逆輸入!? 『スーパーマリオブラザーズ』

1985年に任天堂から発売された『スーパーマリオブラザーズ』は、今もなお任天堂の顔として活躍する有名キャラクター・マリオが主人公となり大活躍する名作アクションゲームだ。のちに続くさまざまなシリーズの元祖ともいえる伝説的な作品で、完成度の高い“横スクロールアクション”は数多くのプレイヤーを熱狂させた。

そんな本作にもさまざまな裏技が登場しており、“無限1UP”や“特定ステージへのワープ”など、ゲームの攻略に役立つものも多い。ただそのなかで、攻略にはまったく持って無意味でありながら、そのコミカルさや手軽さからついついファンがやってしまいがちなのが、通称「キンタマリオ」と呼ばれる裏技だ。

なかなか際どい名前の裏技だが、やり方は至って簡単。まずはキノコ(もしくはファイア)を取った状態のマリオで「1-2」や「4-2」といったいわゆる“地下ステージ”に行き、足場をうまく経由して天井裏に登る。そこで、“獲得コイン”を表すアイコンの上に重なる……というもの。

すると光り輝くコインのアイコンがマリオのちょうど股の下から覗く形となり、裏技の名前にもなっているコミカルな絵面を作り上げることができるのだ。

前述のとおり攻略においてはまったく無意味なこの裏技だが、実はあまりにもファンの間で有名になった結果、このネーミングや内容が発売元の任天堂の耳にも入ったようで、のちに発売された『マリオ&ルイージRPG』では、なんと“ルイージの股間を叩きコインを獲得する”といった小ネタが追加されている。

ファンの間で広まったお遊び要素が、のちのシリーズにまで影響をもたらしてしまった、なんとも意外な“裏技”といえるだろう。

■攻めた演出に子どもたちもどぎまぎ? 『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』

1987年にファミコン版がログインソフト(アスキー)から発売された『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』は、『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親でもある堀井雄二さんがシナリオを手掛けたことでも有名なアドベンチャーゲームだ。本作のオリジナルであるパソコン版は「コマンド選択式」を初めて導入した作品でもあり、随所で適切なコマンドを選ぶことで物語が進行していく。

東京湾の晴海埠頭で発見された死体の謎を解明するため、プレイヤーは手掛かりを探るべく北海道の各地の名所を巡っていく……というストーリー。練り込まれたシナリオはもちろん、「摩周湖」や「網走刑務所」といった名所の数々がリアルに表現されており、ちょっとした“観光気分”も味わうことができる。

そんな本作にも数々の裏技が存在している。なかでも攻略にはまったく影響を及ぼさないものの、そのちょっと過激な内容から当時のファンを夢中にさせたのが、ヒロインの一人・中山めぐみに関する“裏技”だ。

とある温泉のワンシーンで、バスタオル一枚を身にまとった姿のめぐみを見ることができるのだが、実はこの“お色気”シーンには続きがあった。

この状況で「なにかとれ」、「めぐみのバスタオル」とコマンドを選択し、そのまま2分ほど待機する。するとなんと、めぐみが身に着けていたバスタオルをはずし、一糸まとわぬ姿になるのだ。

無論、ファミコンゆえにドット絵での表現ではあったが、それでも当時プレイしていたファンたちにとっては実に刺激的なワンシーンだったといえるだろう。攻略には無関係だが、その攻めた内容でプレイヤーたちを虜にしてしまった“裏技”である。

■けなされることまで先読みした監督の狡猾さ?『たけしの挑戦状』

いまでこそゲームはセーブデータを用いて前回までのプレイ状態を再現できるのが当たり前になっているが、ファミコン時代は特定の「パスワード」を入力する方式も珍しくはなかった。

このパスワードに裏技を仕込んだ作品も少なくはないのだが、あまりにも意外な効果の裏技が仕込まれていた一作といえば、1986年にタイトーから発売された『たけしの挑戦状』だろう。

本作は、俳優や監督としても活躍しているビートたけしさんが監修したファミコンゲーム。凄まじい自由度を誇る一方、もはや“理不尽”とすらいえる高難易度な謎解きの数々が有名だ。そのあまりにも前衛的すぎる作りから、いまだに“伝説の一作”として語り継がれている。

そんな本作においても、あらかじめ工程を知っていなければ到底再現できない数々の“裏技”が存在するのだが、今回紹介したいのがゲームコンティニュー時のパスワードだ。

通常、パスワードにはゲーム上で発行された不規則な文字列を入力する必要があるのだが、ここで「たけしのあほ」という一言を入力すると、なんと即ゲームオーバーになってしまうのだ。

監修したビートたけしさんが自身をけなされることを想定し仕込んだのかはわからないが、パスワード入力後に主人公の葬式シーンに直行するのは、なんともシュール極まりない展開だろう。

もちろん、ゲームオーバーになってしまうためパスワードとしてはなんの効力もないが、まず通常のプレイでは気付くことのできない意表を突いた“裏技”である。

ファミコン作品の“裏技”はどれも便利な効果のものばかりだが、一方で今回紹介したような制作者の“遊び心”を感じられるものも多く存在している。ひとたびやり方が分かると、ついつい試してみたくなってしまうのも、古き良き“裏技”の魅力なのかもしれない。

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