【感染症ニュース】マイコプラズマ肺炎全国定点0.4 前週比25%増加 医師「7月から増加と予測」

長引くせきに要注意!

国立感染症研究所の2024年第25週(6/17-23)速報データによると、この週の「マイコプラズマ肺炎」の定点あたり報告数は0.4。前週の0.32から、25%増加しています。患者数は、緩やかに増加傾向にあります。中国では、2023年から患者の増加が報道されていますが、この先の見通しについて、感染症に詳しい医師を取材しました。

【7月に注意してほしい感染症!】新型コロナ徐々に増加 夏の感染症「手足口病」警報レベルのエリアも… 医師「マイコプラズマ肺炎、今後、更に増加」と予測

マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症です。小児や若い人の肺炎の原因としては比較的多いものの一つです。例年患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下ですが、成人の報告も見られます。マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられ、冬にやや増加する傾向があります。

症状は?

発熱や全身けん怠感(だるさ)、頭痛、痰を伴わない咳などの症状がみられます。せきは少し遅れて始まることもあります。咳は熱が下がったあとも長期にわたって(3〜4週間)続くのが特徴です。多くの人はマイコプラズマに感染しても気管支炎ですみ、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎となり、重症化することもあります。一般に、小児の方が軽くすむといわれています。

感染経路は?

感染は飛沫感染が多く、患者のせきの飛沫を吸いこんだり、患者と身近で接触したりすることにより感染すると言われています。家庭のほか、学校などの施設内でも感染の伝播がみられます。感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2〜3週間くらいとされています。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は「マイコプラズマ肺炎の流行は、これから起こると考えられ、7月から9月に増加すると予測しています。マイコプラズマ肺炎は日本では4年周期、オリンピックの年に流行すると言われてきました。その法則でいくと2020年に大きな流行があるはずでしたが、新型コロナ流行の影響でほとんど患者が出ることはなく、その後も患者数はきわめて少数でした。しかし今年に入り、患者報告数が一定程度、出始めています。最近、小児科を受診したお子さんが、マイコプラズマ肺炎と診断されたケースも耳にしましたし、秋口に向け、患者数の増加に注意が必要です。通常マイコプラズマ肺炎は抗菌薬で治療しますが、中国での流行時には、通常使用されている抗菌薬の効かない『耐性菌』が増えていると報告されています。ただし、抗菌薬にはいくつか種類があるので、耐性菌に対しても効果がある抗菌薬もあります。適切な治療をしないと、肺炎に至るケースもありますので、気になる症状がある時は、早めに医療機関を受診することをおすすめします」としています。

重症化や合併症のおそれも

マイコプラズマ肺炎は時には重症化することもあり、喘息用気管支炎を呈することは比較的多く、急性期には40%で喘鳴が認められ、また3年後に肺機能を評価したところ、有意に低下していたという報告もあります。昔から「異型肺炎」として、肺炎にしては元気で一般状態も悪くないことが特徴であるとされていましたが、重症肺炎になることもあり、胸水貯留は珍しいものではないとされています。他に合併症としては、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などがあります。
安井医師は「マイコプラズマ肺炎では、重症化し入院に至る例も少なからずあります。実際に、診察したケースでは、長引く咳で体に力が入らず、血中の酸素濃度が低下し、挿管が必要なケースでした。子どもの間でも、流行する感染症ですが、高齢者の方も発症・重症化の可能性があります。長らく流行がなかった感染症なので感受性者が多く、一度流行が始まると大きな流行となる可能性もあります。咳を中心に、呼吸器系の症状があるため、初期症状では、新型コロナと見分けがつきにくいケースもあるかも知れません。医療関係者の方も、知っておいて頂きたいです」としています。

治療・予防

治療は抗菌薬(抗生物質)が有効ですが、マイコプラズマ肺炎に効果があるものは一部に限られています。近年は抗菌薬の効かない「耐性菌」が増えてきているとされていますが、耐性菌に感染した場合は、他の抗菌薬で治療するなどします。予防法はインフルエンザや新型コロナと同じく、手洗いや咳エチケット、マスクなどを心がけてください。特にせきが出る場合は、他の人にうつさないように気をつけましょう。そして、長引く咳などの症状があるときは、医療機関で診察を受けるようにしましょう。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ2024年第25週、マイコプラズマ肺炎とは
厚生労働省:マイコプラズマ肺炎に関するQ&A(平成23年12月作成、平成24年10月改訂)

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏

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