日産と神奈川工業高校、日産横浜自動車大学校、次世代のクルマ社会に必要な人財を育てる「次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアム」設立

by 深田昌之

2024年7月4日 開催

産学連携の取り組みである次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアムの調印式が開催された

産学連携で自動車のエキスパートを育成

日産自動車、神奈川県立神奈川工業高校、日産横浜自動車大学校は7月4日、自動車業界の競争力強化のための早期人財育成を目的とした産学連携協定を締結し「次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアム」を設立した。

同日に神奈川工業高校 校長の片受健一氏、日産横浜自動車大学校 校長 井出泰男氏、日産自動車 中日本リージョナルオフィス ROS長 上原健太郎氏が出席して調印式を行なった。

神奈川工業高校、日産横浜自動車大学校、日産自動車による産学連携「次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアム」を設立
左から日産自動車株式会社 中日本リージョナルオフィス ROS長 上原健太郎氏、日産横浜自動車大学校 校長 井出泰男氏、神奈川工業高校 校長の片受健一氏

この次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアムは、EV(電気自動車)、自動運転、コネクテッドなど、技術革新が著しい現代において、今後の自動車業界の脅威でもある国内の少子化、理系離れなどの課題に対応するもの。

内容としては自動車産業発祥の地の1つである神奈川県で、工業高等学校、専門学校、企業が産学連携し、一貫した7年間(高校3年間、専門学校4年間)の育成プログラムを運用するものとなる。この取り組みにより次世代に対応できるモビリティエンジニアを育てて自動車業界の成長に貢献するという。

コンソーシアムの目的。次世代モビリティエンジニア育成という共通のゴールに向けて、高校、専門学校、企業が産学連携をしてモビリティエンジニアの育成を行なうことで、高度化、細分化する社会に対応する。この取り組み自体が教育委員会も掲げている産学連携社会に開かれた教育課程の方策の1つになると考えているとのこと

次世代モビリティエンジニア育成コンソーシアムが計画しているのは以下のステップ。まずはステップ1として神奈川工業高校での3年間で自動車業界への認知拡大、好奇心増やすことを目的に、日産自動車と日産横浜自動車大学校からさまざまなプログラムを提供する。また、自動車産業、モータースポーツの歴史を学べる見学会や日産テクニカルセンターの見学、自動車エンジニアとして現在活躍中の先輩との座談会、日産の最先端技術の事業などを通じてモビリティエンジニアになるための素養を醸成し、自動車業界への興味を持ってもらうこととしている。

ステップ2は、日産横浜自動車大学校の4年間ではモビリティエンジニアに必要な知識、スキルを習得する。日産直営の整備専門学校ならではの充実した教育環境や最先端の技術を備えた実習や特別授業により、自動車業界で即戦力となり得るモビリティエンジニアを育成し、最終的には高度故障診断の実践スキルを持った国家一級自動車整備士の資格を取得。自動車業界の最前線で活躍できるエンジニアとなってもらうというものだ。

神奈川工業高校の機械科の生徒80名を対象に、日産から日産施設の見学や先輩エンジニアとの座談会、日産横浜自動車大学校で日産の最先端技術の授業などを体験し、自動車業界への関心や好奇心を生み出す。そして日産横浜自動車大学校に入学後、整備士資格取得のための授業のみならず、メーカー直営校ならではの授業カリキュラムを履修する
コンソーシアムでの育成プログラムのゴールキャリアパスとして、日産における実験部、開発エンジニア、工場での完成検査員、日産ネットワークにおける高度故障診断を実践する整備士を数多く排出していきたいとのこと
高校1年生から3年生までのカリキュラムは自動車業界への認知や好奇心の養成を行なう。進学してからはモビリティエンジニアとして必要な知識、スキルの習得、人間力の醸成を行なう。日産横浜自動車大学校では国家一級整備士取得のための授業に加え、メーカー直営校ならではのEVを使った実習、日産のエンジニアからの最先端技術の授業、日産のテストコースでの試乗体感授業、リアルな現場での実習を含めたインターンシップやモータースポーツ活動への参画などがあり、こういった活動を通してエンジニアとして必要なスキル、知識、人間力の育成を行なう

調印式での代表者あいさつ

神奈川工業高校 校長の片受健一氏

式に出席をした神奈川工業高校 校長の片受健一氏は「現在、高校の中の教育だけではなく、社会に開かれた教育課程ということで、企業さま、大学さま、専門学校さまと、さまざまな連携を図っております。本校は工業高校ですので、これまでもさまざまな企業さま、大学さまとの連携をさせていただいておりました。そして機械科の卒業生に至っては日産横浜自動車大学校さまへ進学、そして日産自動車さまへ就職といった実績があります。われわれとしてもこのように目的意識を持った卒業生を排出したいという気持ちは持っています。現在は社会の変化が激しい時代ですので、生徒には就職する段階でしっかりと自分の目的意識を持って卒業してほしい思っております。そのためのコンソーシアムです。卒業生がこれから日本、あるいは世界を作っていくことをサポートできる制度になってほしいと思っております」と語った。

日産横浜自動車大学校 校長の井出泰男氏

続いては日産横浜自動車大学校 校長の井出氏があいさつ。井出氏は「日本は世界有数の自動車大国と言われています。また、自動車産業に携わっている人は全国で550万人いて、うち33万人ほどが整備士であると言われています。そして日産のネットワーク、日産の販売会社には整備士が約1万1000人いるのですが、私共の学校はこちらの整備士の育成をやっている学校でございます。さて、日産自動車ですけれども、現在の従業員が国内では2万4000人いて、日々クルマの開発ですとか生産、販売に携わっています。クルマの産業は日本の経済を支えている存在ではありますが、やはりほかの産業と同様に少子化の影響を受けています。また、若干業界的なもので言いますと『若者のクルマ離れ』と言われる風潮もあり、優秀な人材を確保して育てていくというのが少しずつ難しくなっています。そんな中、コンソーシアムのお話をいただきました。高校生のときから自動車や自動車産業に興味を持っていただいて、そしてしっかり育んでいただけるような、そういった素晴らしいプログラムだなと思いました。このプログラムを通じて自動車産業に理解を深めていただいて、クルマを好きになっていただき、1人でも多くの方々がモビリティエンジニアとしてわれわれの業界に飛び込んでほしいと思います」と話した。

日産自動車 中日本リージョナルオフィス ROS長 上原健太郎氏

最後は日産自動車 中日本リージョナルオフィス ROS長 上原健太郎氏があいさつ。上原氏は「私からは日産自動車、そして販売会社を含む日産グループ代表としてごあいさつをさせていただければと思います。私としてはこの連携協定が安心安全、そしてわくわくな世の中を実現する大きな一歩となると確信していますし、期待をしています。日産自動車は1つの未来を目指しています。それがどんな未来かと申しますと、交通事故死傷者をゼロにする、人を守るということでして、同時に排出ガスをゼロにすることであります。これらの実現に向けて、日産自動車の革新的な技術をもって取り組むことが日産自動車、日産グループの大義です。そしてそのためにあるのがBEVです。排出ガスゼロの技術、先進の交通安全技術が盛り込まれております。そして、去年のBEVの販売台数を見ましても、日本での販売台数1位が日産のサクラ、2位が日産のリーフ、そして3位が日産のアリアになっておりまして、日本でのEVの販売台数トップ3を独占しているかたちになります。このことから、日産自動車は高度な技術は持っているだけでなく、それを製品に搭載する、実現する技術もあるのです。またそれを世の中に広めていく技術についても優れているのが特徴と思っております。今回、神奈川工業高校さま、そして日産横浜自動車大学校さま、そして日産自動車の産学連携を通じて、多くの生徒さんが日産の目指す未来に共感をし、興味を持ってもらって、日産グループの新たな心強い仲間になってくれることを大いに期待をしております」と述べた。

調印式の模様。自動車の進化にはモビリティエンジニアの存在が欠かすことができないだけに、このコンソーシアムのにより優秀なエンジニアが多く生まれることを期待したい

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