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岐阜県大垣市上面の屋内釣り堀「量山園」が8月末、半世紀の歴史に幕を下ろす。バブル期には1日200人以上が訪れ、親子3代にわたって通う客もいるが、コイヘルペスウイルス(KHV)病や新型コロナウイルス禍に翻弄(ほんろう)され、レジャーの多様化など時代の流れも逆風に。近年は仕入れ値の高騰や施設の老朽化もあり、店主の増田徹さん(68)=養老町下笠=が決断した。施設では釣った魚の数や大きさに応じて点数を付与して景品と交換する仕組みで、得点をためている常連客も多いため、増田さんは「景品へ交換しに来て」と呼びかける。
「50年間、ご愛顧ありがとうございました」-。6月上旬、入り口のガラス戸に手書きの紙を張った。「もう少しやれると思ってたけどね」と増田さんはつぶやく。
19歳の頃にバイトで入り、ほどなく店主を任された。その後、施設を買い取り「自分の城」に。仕事に追われ、家に帰っても寝るだけの毎日。バブル期には盆正月もなく「世間が休みの時こそ書き入れ時」と張り切って働いた。
全盛期には1日200人以上が訪れた。景品は菓子や玩具のほか「何でも仕入れる」と客に宣言し、ミニバイクを用意した時代もあった。景品の一つで、店に預けられた常連客の「マイさお」は数百本。時代とともにレジャーは多様化したが、親子や常連客に支えられて営業を続けてきた。
業界に激震が走ったのが2003年。茨城県霞ケ浦の養殖場で国内初のKHV病が確認されると、同所から仕入れていた量山園にも被害が広がった。「人への影響はないのに、全部のコイを殺さなければならず、何の補償もなかった」。2020年には新型コロナウイルスが流行、初めて大型連休中の営業を断念した。静まりかえった店に来て、死んだ魚をすくうだけの日々が続き「つらくて、生き物を扱うことに耐えられなくなった」。
コロナ禍が落ち着く一方、祭りや行事の復活で魚の仕入れ値が急騰し、入手が困難になった。6月に入って天候不良で魚が急死したほか、地下水をくみ上げて使う水槽の水漏れなど問題が相次ぎ、ついに営業の継続を諦めた。
増田さんはすっかり数が減ったコイと金魚の水槽に目をやり「魚のことしか知らない。辞めた後どうするかなんて想像もできない」と力なく笑う。それでも「お客さんがいたから続けてこられた。黙って辞めるわけにはいかない」と感謝を口にする。
釣果に応じて2点、10点などと与えられる点数を、2万5千点ためた常連客もいる。交換を呼びかけるが「(景品が足りるか)不安で逃げ出したい」と冗談めかして笑う。釣り堀としての営業は大幅に縮小したが、8月末まで土日のみ、主に景品交換のために店を開ける。問い合わせは量山園、電話0584(73)7092。
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