よく行くファミレスはランチタイムなら「500円」です。レギュラーメニューと比べてお得ですが、お店は損していないのでしょうか?

ランチ営業は儲かるの?

飲食店の原価率は、30%が目安といわれています。しかし、近年は食料品の値上がりが相次いでおり、(株)帝国データバンクが2022年4月に実施した「『上場主要外食100社』価格改定動向調査」によると、飲食店の平均原価率は2021年度で37.5%でした。

業態別に見ると、大衆食堂では44.4%、レストランでは39.6%、居酒屋では35.9%と軒並み35%を超えています。

したがって、通常メニューより単価が低いランチ営業は必ずしも「儲かる」とはいえないでしょう。しかし、以前と比べて値上げはしたものの、ランチ営業を続けている店は多くあります。その理由は、ランチ営業を実施していると利益以外のメリットがあるからです。

飲食店がランチタイムを設ける理由

飲食店がランチタイムを設けると、食材費のほかに人件費や光熱費などがかかるといったデメリットもあります。特に食材が高騰している現在、「利益を出したいから」といった理由だけではランチタイムを設ける必要はないでしょう。

本項では、原価率が上がって利益が薄くなっても、飲食店がランチタイムを設ける理由やメリットを紹介します。

食材のロスを減らすため

飲食店では、毎日さまざまな食材を使います。全ての食材を満遍なく使うのが理想ですが、メニューが多い飲食店ほど日によって食材の偏りが発生しがちです。夜だけの営業の場合、その日に使い切れずに廃棄するしかない食材もあるでしょう。

しかし、ランチタイムに余った食材を活用できるメニューを提供すれば、食材のロスを減らせます。食材のロスを減らせれば仕入れも効率的に行え、結果的に利益アップにつながる可能性があります。

稼働率を上げて売り上げを伸ばすため

お店の稼働時間が長くなれば、それだけ売り上げをアップできる可能性があります。夜の営業がメインでも季節や時期によっては来客者が少なくなり、売り上げが落ちるときもあるでしょう。ランチタイムに営業すれば、損失を少しでも減らせる可能性があります。

飲食店によっては、ランチタイムにはテイクアウトもできるメニューを多くするなど、オフィスに持ち帰って昼食を食べる方をターゲットにしている場合もあります。お弁当の販売ならば、ランチタイムの時間中に必要な人手も最小限で済むため、人件費もおさえられるでしょう。

宣伝効果が高いため

ディナータイムの客単価が高いお店は、「興味があるけれど敷居が高すぎて入れない」と感じる方も少なくありません。ランチタイムに手が届きやすい価格のメニューを提供すれば、「夜も足を運んでみようか」と思わせることもできるでしょう。

また、「ランチはおいしかった」と口コミを広げてくれれば、ターゲットとしている客層の耳に届く可能性があります。

このほか、ランチにお得意さまと会食する会社を顧客にできれば、単価の高いランチを出しても採算がとれる可能性があります。

ランチ営業は儲けが少なくても行う価値があるケースも多い

ランチタイムの営業は、必ずしも利益が大きいから行っているとはかぎりません。飲食店によっては大した儲けがなくても、「宣伝効果が高い」「お弁当の需要がある」といった理由で続けているケースもあるでしょう。また、ランチタイムによく使うお店がある場合は、ディナータイムにも足を運ぶことで、お店の応援になるケースもあります。

普段は値段が高く、行きたくても行けないお店があれば、ランチタイムに行ってみてはいかがでしょうか。そこで、お気に入りのお店が見つかるかもしれません。

出典

株式会社帝国データバンク 「主要外食100社」価格改定動向調査 2022年4月

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

© 株式会社ブレイク・フィールド社