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金持ちは大変だね……他人事と思っていた「相続トラブル」。しかし、裁判沙汰にまで発展するのは「遺産総額1,000万円以下」が最も多く、実は一般人のほうが相続トラブルに巻き込まれやすいというのが実情です。今回は子どものいない夫婦にまつわる相続の問題点をみていきます。
増加傾向にある「子どものいない夫婦」
国立社会保障・人口問題研究所『出生動向基本調査』によると、1985年、子どものいる世帯2,078.9万世帯に対し、子どものいない世帯は615.5万世帯、そのうち共働き世帯は251.8万世帯でした。
その15年後の2000年。子どものいる世帯1,927.8万世帯に対し、子どものいない世帯は1,001.5万世帯、そのうち共働き世帯は368.5万世帯でした。
さらに20年後の2020年。子どものいる世帯1,593.7万世帯に対し、子どものいない世帯は1,212.1万世帯、そのうち共働き世帯は443.5万世帯でした。
子どものいない世帯は右肩上がりですが、このなかには、子どもが独立して実家を出ていったというパターンのほか、そもそも子どもを持たないパターンが含まれ、どちらも増加傾向にあります。
同研究所が2005年生まれの女性で子どもを持つ人の割合をシミュレーションしたところ、最も少ない仮定では50歳時点の無子率は42%。高位仮定で24.6%。その中間である中位仮定で33.4%。つまり3人に1人は子を持たないということになります。
その背景にあるのは、将来不安があるとされ、先日厚生労働省から発表された「財政検証」によると、楽観的な見方をした場合でも年金は1割ほどの目減り、現状の経済状態が続くと仮定した場合は2割減とシミュレーション。いまの高齢者のように年金依存度が高い状態では、とても暮らしていけず、自助努力が必須というわけです。
――とても子を持つ気になれない
そんな若年層が増えているのです。ただ子のいない夫婦は「相続トラブルに巻き込まれやすい」という一面があるので、しっかりと相続対策をしておきたいもの。夫を亡くしている50代女性も子どもがおらず、相続トラブルに巻き込まれるリスクがあったといいます。
「子どもがいないのだから、遺産をよこせ!」とんでもない主張をした2人の義姉
さかのぼること15年前。義父が亡くなったときのこと。このときの相続人は女性の夫(長男)と、ふたりの義姉でした。遺産の対象となるのは、実家と預貯金や株式など。総額3,000万円ほどになったとか。義父は「3人の子どもたちで均等に分けるように」という遺言書を残しており、特に揉める要素はなかったといいます。
しかし、2人の義姉は女性の夫に詰め寄ったといいます。
――あんたたちのところには子どもがいないんだから、お父さんの遺産なんていらないでしょ
――私たちは子どもがいて大変なの。お父さんの遺産を多くもらえる権利があるわ
子どもがいないことを悪くいう義姉に、夫から報告を受けた女性は強い怒りを覚えたといいます。最終的に遺産分割は遺言書通りに行われましたが、このことがきっかけに、義姉とは疎遠になったといいます。
それから10年ほど経ち、今度は夫ががんに。発見したときはすでに手遅れで、夫は1年後に死去。60歳を前にした若すぎる死でした。心づもりしたつもりだったけど、生涯のパートナーを亡くした悲しみはとてつもなく大きなものだったと女性は振り返ります。
そこにやってきたのは、2人の義姉。改めて女性の自宅に来ることになったのです。そしてお悔やみの言葉も早々に、切り出してきたのは夫の遺産について。
――わたしたちも相続人だから。きちんとお話ししておかないとと思って
本当に意地汚い……と口に出そうだったといいますが、ぐっと飲み込んで「夫の遺産は1円もありませんよ」と伝えました。
――まさか、そんなはずは。父の遺産も残っているはずでしょ
目論見が外れて言葉を慌てる義姉。義父の遺産相続でイヤな思いをした夫婦は、夫名義、さらには夫婦共有の財産をつくらない方向で資産形成を進めていったといいます。
――夫名義の貯金もほとんどゼロですし、この家も私の名義です。保険はありますが……これは遺産分割の対象外ですよね
子のいない夫婦…相続対策の基本「遺言書」も気をつけたい「遺留分」
プラスの財産はもちろん、マイナスの財産も相続の対象。つまり人が亡くなると、必ず相続が発生するといえます。相続人は民法によって、配偶者は常に相続人となり、血族には優先順位が決まっていて、先順位の人が相続人になると決められています。第1順位は亡くなった人の子。第2順位は亡くなった人の親。そして第3順位は亡くなった人の兄弟姉妹です。
このケースでは子どもがいないため、妻である女性のほか、義姉も相続人になります。親子であればトラブルになることは少ないですが、義理のきょうだいとなると、さまざまな事情が絡み合い、トラブルに発展しがちというわけです。
そんなトラブル防止のためにも遺言書が有効になりますが、遺言書を残す際に知っておきたいのが「遺留分」。これは一定の相続人に対して遺言書でも奪うことのできない一定割合の留保分のことで、法定相続分の半分が認められます。遺留分が認められるのは、配偶者のほか、法定相続人の第2順位まで。兄弟姉妹に遺留分はないので、このケースでは遺言書を残しておけば、まずはひと安心。念には念を入れて、相続対策(義姉対策)をしたということでしょう。
1点、子のいない夫婦の相続で気をつけたいのが、たとえば亡くなった配偶者が再婚で、元配偶者との間に子がいる場合。そのようなケースでは、たとえ遺言書を残していても、元配偶者との間の子から遺留分を請求される可能性があります。
このように、子どものいない夫婦の場合、面倒になりがちなのが相続。万が一のことに備える場合、相続対策もしっかり行っておきたいものです。
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