全国企業倒産集計2024年上半期報 上半期の倒産、2014年以降で最多

倒産件数推移(年半期)

概況・主要ポイント

1.2024年上半期の倒産件数は4887件(前年同期4006件、22.0%増)と、前年同期に比べて881件多く、2年連続で前年同期を上回った。2014年上半期(4756件)以降で最多となった

2.負債総額は6810億1500万円(前年同期9065億8400万円、24.9%減)と、2年連続で前年同期を下回った。負債額が小規模な中小零細企業の倒産が目立った

3.業種別にみると、全7業種中6業種で前年同期を上回った。『サービス業』(前年同期958件→1228件、28.2%増)は15年ぶりに1200件を超えた。『小売業』(同834件→1029件、23.4%増)では、「飲食店」(同378件→435件)が2000年以降で最多となった

4.主因別にみると、『不況型倒産』の合計が4029件で、全体の8割を占めた。「経営者の病気、死亡」は、2000年以降で最多となった

5.態様別にみると、「破産」は4595件発生し、2015年以来9年ぶりの4000件超となった

6.規模別にみると、負債「5000万円未満」の倒産が2898件で、小規模な倒産増加が目立った

7.業歴別にみると、「30年以上」が1564件で全体の32.0%を占めた。業歴100年以上の老舗企業の倒産が74件発生し、2000年以降で最多となった

8.地域別にみると、上半期としては2年連続で全9地域が前年を上回った。このうち、『北海道』『中部』『四国』を除く6地域で、上半期としては過去10年で最多となった。『関東』(前年同期1433件→1732件、20.9%増)は、10年ぶりに1700件台となった

注目の倒産動向 -1

■「道路貨物運送」倒産動向

道路貨物運送業者の倒産、最多ペースで推移

燃料価格の高騰と人手不足を背景に増加

 2024年上半期(1-6月)の道路貨物運送業者の倒産件数は186件。前年同期(133件)から39.8%増となり、4年連続で増加した。上半期としては2009年(218件)に次ぐ件数となり、このままのペースで推移すると年間最多となった2009年(374件)を上回る可能性がある。一方、負債総額は227億8800万円と前年同期(250億6800万円)を下回り、1社あたりに換算すると約1億2300万円となった。10億円を超える倒産は発生せず、1億円未満の小規模な業者の倒産が54.8%を占めた。

 倒産要因として多くみられたのが、燃料価格の高騰と人手不足(人件費負担)だった。軽油価格は燃料油価格激変緩和補助金導入後でも1リットル155.2円(7月3日時点、資源エネルギー庁)で、10年前の147.4円(2014年7月7日時点)に比べると7.8円も高い。小規模事業者としては、収益確保のために荷主に対して値上げ交渉を進めたいところだが、安値の同業者に流れて失注しかねず、継続的には交渉がしづらいという現状も経営悪化を招いている。

 時間外労働の上限規制の開始による深刻な人手不足で、傭車コストの増加が営業損失の要因となるほか、コロナ後の荷動き回復で増車したものの、燃料費や部品の値上げで収益を圧迫され、車両リース料や借入返済など金融債務が負担となるケースもあった。年下半期も引き続き道路貨物運送業者の倒産は高水準で推移することが予想される。

■ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産

2024年上半期は390件発生 年半期ベースで過去最多

 「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は、390件(前年同期305件、27.9%増)発生、年半期ベースで過去最多を更新した。2020年以降に実際の融資額が判明した約490社のゼロゼロ融資借入額の平均は約5800万円となり、「不良債権(焦げ付き)」に相当するゼロゼロ融資喪失総額は推計で約940億1100万円にのぼった。

■人手不足倒産

2024年上半期は182件発生 年半期で初の180件超

 「人手不足倒産」は、182件(前年同期110件、65.5%増)発生した。初の180件超えとなり、通年で過去最多を大幅に更新するペースで推移している。業種別では、『建設業』(53件)が最も多く、全体の約3割を占めた。『運輸・通信業』(44件)は前年同期(20件)から倍増した。

注目の倒産動向 -2

■「焼肉店」倒産動向

「焼肉店」の倒産急増、過去最多ペース

焼肉店の3割超が「赤字」 円安で牛肉高騰が打撃

 焼肉店の倒産ペースが加速している。2024年に発生した「焼肉店」経営事業者の倒産は、6月までに計20件発生した。23年の同期間に比べて約2.5倍となったほか、年間としてはこれまで最も多かった19年通年(26件)を大きく上回る勢いで推移し、過去最多を更新することになる。さらに、個人営業など小規模店の閉店や廃業などを含めれば、実際はより多くの焼肉店が市場から退出したとみられる。

 コロナ禍でニーズが高まり出店が相次いだ焼肉店は、顧客の獲得競争が激化していることに加え、円安などを要因とした食肉価格の高騰が経営を直撃している。焼肉店を中心に展開する外食企業のうち、2023年度の業績が「赤字」となった企業の割合は34.8%を占めた。前年度から利益が減少した「減益」を合わせた「業績悪化」の割合は64.6%に上り、過去10年で2番目に高い水準だった。電気・ガス代や人件費など店舗運営コストの負担増に加え、米国産や豪州産などの輸入牛肉、さらには価格を抑えたメニューで採用される安価な豚肉でも円安で価格が高騰したことが重荷となった。一方、物価高騰による消費者の「値上げ疲れ」で客足が途絶えることへの懸念が強いことから大幅な値上げが難しく、小規模な焼肉店などでは厳しい価格競争に耐え切れなくなっていることも、近年、淘汰される中小焼肉店が増えた要因となった。

 牛肉などの原材料価格・人件費・光熱費と二重・三重でコストが増加し、焼肉店でも値上げは避けられない情勢となってきている。新メニューの開発や店舗の雰囲気・サービスの向上など、値上げしても客足が途絶えない創意工夫を求められる局面を迎えている。

■後継者難倒産

2024年上半期は268件発生 前年同期から減少も高水準で推移

 「後継者難倒産」は、268件(前年同期272件、1.5%減)発生した。上半期としては3年ぶりに前年同期を下回ったものの、250件を超え高水準で推移している。業種別では、『建設業』(56件)が最多で、『サービス業』(44件)、『卸売業』(43件)、『小売業』(43件)が続いた。

■物価高(インフレ)倒産

2024年上半期は484件発生 450件を超え、過去最多を大幅に更新

 物価高(インフレ)倒産は、484件(前年同期375件、29.1%増)発生した。年半期で初めて450件を超え、過去最多を大幅に更新した。このペースで推移した場合、2024年通年の件数は900件を超える可能性がある。業種別では、『建設業』(124件)が最も多く、『製造業』(109件)、『運輸・通信業』(91件)が続いた。

今後の見通し

2024年の企業倒産は1万件突破も視野に

 2024年上半期の企業倒産は4887件に急増し、前年同期(4006件)を22.0%上回った。物価高、人手不足、コロナ支援策の縮小を受け、上半期としては2014年(4756件)以来10年ぶりの水準まで増加した。急速な円安進行、力強さを欠く個人消費など、下半期も中小企業を取り巻く経営環境は厳しく、2024年の企業倒産は1万件突破も視野に増加基調が続く見通しである。

 粉飾決算で金融機関から融資金を詐取したとして、ベアリング販売の堀正工業(2023年7月破産、負債282億6600万円)元代表らが6月18日に逮捕された。40超の金融機関が虚偽の決算書でだまされ、過去に類を見ない“世紀の大粉飾”となった。その後に相次いだ「粉飾倒産」の端緒ともなったが、破産からわずか1年あまりでのスピード立件となりそうだ。事件後、金融機関は融資先の粉飾可能性をこれまで以上に厳しく精査するようになり、今なお粉飾事案の発覚が続いている。今年下半期にかけても、こうした動きはしばらく続くに違いない。

ゼロゼロ融資の返済が困難な企業は選別へ

 政府は6月7日に「今後の中小企業向け資金繰り支援について」を公表し、金融機関に対してコロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底等を要請した。具体的には、新型コロナに焦点を当てた支援策は6月末で終了する一方で、今なおコロナ禍の影響に苦しむ事業者の再生支援を強化する。また、円安等に伴う資材費等の価格高騰対策として実施中の「セーフティネット貸付」は12月末まで継続する。一部の制度を除き、コロナ禍前の平時に戻される形となり、ゼロゼロ融資の返済が難しい企業の選別がどこまで進むのか注視したい。

 “私的整理の多数決導入”に向けた議論が再び動き出した。これまでにも、政府は多数決原理に基づく倒産前手続(=私的整理手続)を可能とする法制化を検討してきたが、意見がまとまらず今日に至った経緯がある。経済産業省は6月28日、制度を議論するための新たな有識者会議となる「事業再構築小委員会」を立ち上げ、初回会合を開いた。2025年にも国会での議論に進む可能性がある今回の法制は、債務減免が必須な再生案件の増加が見込まれるなかで、中堅・中小企業の早期かつ迅速な事業再構築の動きを後押しすることになりそうだ。

円安、利上げ、2024年下半期も小規模事業者の淘汰進む

 円安の動きが止まらない。7月3日の外国為替市場で一時1ドル=161円90銭台まで下落し、1986年12月以来37年半ぶりの円安ドル高水準となった。財務省は「急速な円安進行に深刻な懸念を有している」との認識を示しているが、日米金利差を意識した円売り・ドル買いの動きは当面続くとみられる。帝国データバンクの調査では、企業の想定為替レートは平均1ドル=140円88銭と、実勢レートとの間で20円近くの隔たりがある。企業側の想定を上回るスピードで進む円安が事業遂行面に影響を与えるほか、輸入物価の上昇を通じて企業収益がさらに悪化しかねない。

 追加利上げがいよいよ現実味を帯びつつある。日本銀行が6月24日に公表した6月の金融政策決定会合の「主な意見」では、一部の政策委員が「円安は物価見通しの上振れの可能性を高める要因であり、(中略)適切な政策金利の水準は、その分だけ上がると考えるべき」と述べるなど、物価や賃上げの動向を踏まえて早期の追加利上げに前向きな意見が出された。企業向け貸出金利は足元ではすでに上昇に転じているが、これからが本番だ。今後は金利負担に耐えられない小規模事業者の倒産が、2024年下半期にかけてさらに増える可能性が高い。

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