公取委、トヨタ子会社に下請法違反で勧告 金型無償保管や不当返品

Maki Shiraki

[東京 5日 ロイター] - 公正取引委員会は5日、下請け企業に金型を無償で長期間保管させるなどの下請け法違反があったとして、トヨタ自動車の子会社、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD、横浜市)に費用相当額の速やかな支払いと再発防止を勧告した。同社は救急車など特装車両の開発・生産・販売などを手掛け、トヨタが株式の9割超を保有する。

違反行為は2つ。TCDは製品受領後、納品時の品質検査を行っていないにもかかわらず瑕疵(かし)があることを理由として2022年7月から24年3月までの間、下請け企業65社に製品を引き取らせていた。返品した製品の下請け代金相当額は約5427万円で、TCDは同額をすでに下請け企業に支払ったという。

TCDはまた、22年7月以降、下請け企業49社に製品を長期間発注していない金型など計664個を無償で保管させていた。同社はこの保管費用も支払う方針。

公取委の大沢一之・上席下請取引検査官は同日の会見で、金型の無償保管については「取引慣行として定着してしまっている部分がある」と指摘。本来は無料で保管していること自体が「おかしい話」とした上で、下請け企業が保管費用の支払いを求めた事例が確認されておらず、「下請け企業側も以前から取引慣行として慣れてしまっているという感じがする」と話した。

TCDの西脇憲三社長も同日会見し、「仕事のやり方に問題がないという慢心や過信があった」と謝罪。不当返品については、本来は1)自社で品質検査を実施、または2)TCDから下請け企業に品質検査を文書で委任すべきところ、下請け企業による出荷前検査が2)の方法に該当すると誤認していたと説明した。

無償保管については、自社の金型を貸与した場合、「下請け企業がTCDに支払う部品費に保管費も含まれていると誤認していた」と釈明。違反が確認されなかった親会社のトヨタとは「違ったルールで金型を保管していた」という。「社員が悪意でやったことではないと信じている」と述べ、再発防止を徹底するとした。

政府は下請け法の運用を強化しており、金型・木型の保管費用は親事業者が負担するよう求めている。今年2月にはサンデン、3月にはニデックの子会社が勧告を受けている。

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