平畠啓史チョイス“至極の11人”|ゴール前に立ちはだかる姿勢、表情に自信が漲る野澤。パスが正確な秋山は新潟のサッカーに欠かせない【J1月間ベストイレブン6月】

芸能界屈指のサッカー通で、J1からJ3まで幅広く試合を観戦。Jリーグウォッチャーとしておなじみの平畠啓史氏がセレクトする「J1月間ベストイレブン」。6月の栄えある11人はどんな顔ぶれになったか。

――◆――◆――

上位勢同士の試合も多く、月間の順位という意味では少し顔ぶれが変わった印象の6月。福岡が4勝1分で負けなしに加えて、失点1とアビスパらしい戦いで月間では一番多く勝点を重ねた。

そんな6月のJ1ベストイレブン、MVPです。

村上昌謙(福岡)は5試合で失点1は文句なしのパフォーマンス。ク・ソンユン(京都)のPKストップも見事。大迫敬介(広島)のヴェルディ戦のゴールに繋がるフィードもスーパーだったが、今月のベストイレブン、GKはFC東京の野澤大志ブランドン。

5月31日の金曜日に開催されたゲームも6月とカウントすれば、5試合で2失点。数字的にも十分だが、とにかく相手の決定的なシュートをことごとく跳ね返した。圧巻は湘南戦。かなり際どいシュートを止めただけでなく、59分の至近距離からの大野和成のシュート、その後の鈴木淳之介のシュートもストップ。至近距離のシュートに対し、イチかバチかのギャンブル的セーブではなく、しっかりと反応している。ゴール前に立ちはだかる姿勢、表情に自信が漲っていた。

DFは3人でドウグラス・グローリ(福岡)、中谷進之介(G大阪)、東俊希(広島)。

守備陣だけが強固というよりも、チーム全体の守備意識が高い印象の福岡だが、GKの村上そしてドウグラス・グローリ、田代雅也、宮大樹の3バックは簡単なことでは崩れない。その中で高さもあり、対人の対応にも優れるドウグラス・グローリは福岡の守備陣に欠かせない。

ペナルティエリア内でボールを奪われ、危機的状況が訪れた鹿島戦で見事なゴールカバーを見せたG大阪の中谷。想定外の状況にも常にアラートな状態であることを証明して見せた。広島の東は常にベストイレブンに入れたいと思っていた選手。左足のキックの精度は高く、ボランチでプレーしても高いクオリティを披露。今月3アシスト。フォワードが合わせやすいクロスを提供することができる。

【PHOTO】悲願のメダル獲得へ!パリ五輪に挑むU-23日本代表18名とバックアップメンバー4人を一挙紹介!

中盤も3人で、前寛之(福岡)、秋山裕紀(新潟)、伊藤敦樹(浦和)。

アビスパサッカーの象徴と言っても過言ではない前。ハードワークを怠ることなく、プレーの強度を維持し続け、攻守で多くのプレーに関わる。松岡大起とのボランチコンビのタフなプレーはJ屈指。5試合で失点1の福岡の中盤の強度は、この二人が生み出している。

パスの正確性なら新潟の秋山。ただ、パスを出すだけでなく前方へのパスも多い。ボールをしっかりと動かす新潟のサッカーには欠かせない秋山の活躍もあり、新潟は6月、2勝3分と負けなし。しっかりと勝点を重ねた。中盤にダイナミックさを生み出す浦和の伊藤。磐田戦の1G2Aのように、攻撃に伊藤が加わると迫力が生まれる。そのプレーぶりはキャプテンマークを巻くにふさわしい。

右のウイングにはC大阪のルーカス・フェルナンデス。巧みなドリブルに加えて、ドリブルの一連の動きの中でパスを出す身のこなしが見ていて気持ちがいい。キックの精度も抜群で2G1A。ボールを持った瞬間にワクワクする選手だ。

左のウイングにはG大阪のウェルトン。迫力、勢い申し分なし。対応したディフェンスが止めたように見えても、ボールを自分のものにして運んでいくくらいの強さがある。個の力で打開できる力強さは、ガンバの攻撃陣には欠かせない。

前線には神戸の武藤嘉紀と広島のピエロス・ソティリウ。常に限界にチャレンジするような武藤のプレーぶりには圧倒される。試合終了の笛が鳴るまでプレーの強度を落とさず、攻守に走り続ける。ピッチですべてを出し切る姿勢は感動さえ覚える。

ピエロス・ソティリウは6月4ゴール。ゴールを決められるところにしっかりとポジションを取っていることはフォワードにとって何より重要。ヴェルディ戦の3点目。大迫のスーパーロングフィード。加藤陸次樹の最高のトラップからのラストパス。最高のプレーをピエロス・ソティリウが完遂させた。フォワードが決めてくれるとすべてが報われる。

そして、今月のMVPはFC東京の野澤。湘南戦のパフォーマンスはフィールドプレーヤーならハットトリック級の活躍だった。ハットトリック的な表現がゴールキーパーにも欲しい。オリンピック代表にも選出された野澤にはこれからも注目だし、ベンチ前での波多野豪の動きにも注目している。

取材・文●平畠啓史

© 日本スポーツ企画出版社