中島みゆき、チャゲアスら世に出る契機に…昭和のポップス・ロックシーンを切り開いた「ポプコン」とは

(※画像はイメージです)

ヤマハ音楽振興会の主催で1969年から1986年まで開催された音楽コンテスト「ヤマハポピュラーソングコンテスト」。日本の音楽シーンの潮流を変えたこの伝説のコンテストについて、シンガーソングライター、音楽評論家の中将タカノリとシンガーソングライター、TikTokerの橋本菜津美が語り合います。

※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』より

【写真】「ポプコン」の司会を10年務めたラジオパーソナリティー

【中将タカノリ(以下「中将」)】 菜津美ちゃんは「ポプコン」って知ってますか?

【橋本菜津美(以下「橋本」)】 ん? ポップコーンじゃなくて?

【中将】 食べ物じゃなくて「ヤマハポピュラーソングコンテスト」っていうコンテストがあったんです(笑)。略して「ポプコン」。ヤマハ音楽振興会の主催で1969年から1986年まで行われた音楽コンテストで、初めはプロ対象でしたが、1973年の第6回からアマチュアの参加も可能に。優勝者はレコードデビュー権と、日本武道館で開催される世界歌謡祭というイベントへの出場資格が得られるので、数多の若いミュージシャンが参加しました。

【橋本】 なるほど! プロへの登竜門みたいな感じだったんですね。

【中将】 はい。音楽ファンや業界からも相当注目されてましたので、優勝者は高い確率でスターになってますね。それまでのコンテストはテレビ局や大手芸能事務所が主催しているものが多く、どちらかというとアイドルや歌謡歌手向け。ポプコンはちょっと一線を画していて、自分たちで曲を作るシンガーソングライターやバンドが多く集まりました。ニューミュージックやJ-POPの礎を作った層ですね。

【橋本】 今回はそんなポプコンにちなんだ曲を紹介いただけるわけですね?

【中将】 その通りです。まず1曲目は小坂明子さんで『あなた』(1973)。1973年、16歳の時に第6回ポプコンに出場した小坂さん。この曲でグランプリ獲得し、同年11月の第4回世界歌謡祭でも最優秀賞・グランプリを受賞しました。セールス200万枚超と言われる大ヒット曲ですが、小坂さんが学校の授業中にノートの片隅に書いた歌詞に、家で曲を付けたものだそうです。

【橋本】 すごい才能! しかも大ヒットだし、夢ありすぎるデビューですね。

【中将】 ただ、当初は同級生3人グループで出場する予定でしたが、他の2人が出場できなくなって急きょソロで歌ったということ。

【橋本】 詳しい事情は知りませんが、それだけ聞くとちょっと闇を感じますね……(笑)。

【中将】 次に紹介する曲もすごい曲です。中島みゆきさんで『時代』(1975)。高校3年のとき、文化祭でステージを踏み音楽活動をスタートした中島さん。各地のコンテストに出場して注目を集め、1975年9月に『アザミ嬢のララバイ』でレコードデビュー。直後の同年10月、第10回ポプコンでこの曲を歌いグランプリを獲得されました。その後のご活躍は言うまでもないですね。

【橋本】 大好きな曲ですが、背景までは知りませんでした。20歳そこそこでこんな世界観の曲を作っていたなんて驚きです。

【中将】 ちなみに菜津美ちゃんはコンテストの類に出場したことはあるんですか?

【橋本】 すごい昔にありますよ! 地元の兵庫県川西市で開催された、今はもうないコンテストです。予選では評判良かったのに決勝で選んだ曲が良くなかったみたいで、後から審査員さんたちに「なんで決勝であの曲だったの?」と苦言を言われてしまいました。

【中将】 どんな曲だったんですか?

【橋本】 言っていいのかな……好きな人を食べちゃいたいという曲です(笑)。

【中将】 審査員たちにはその芸術性が理解できなかったと(笑)。さて、シンガーソングライターが続きましたが、次に紹介するのはバンドの曲です。世良公則&ツイストで『あんたのバラード』(1977)。

【橋本】 激渋かつ濃密すぎですね……これは世良さんがいくつのときの曲でしょうか?

【中将】 大学4年のときに作られたそうなので、これも20歳そこそこですね。

【橋本】 最近の若い方の曲は「もう恋愛したくない」みたいな内容が多いので、えらい違いですよね。人と人の関係性がすごく濃密! そういう時代だからたくさん名曲が生まれたのかもしれません。

【中将】 世良さん以外は就職することが決まっていたツイストですが、思い出作りのため1977年10月の第14回ポプコンに出場。しかし、ここでグランプリを受賞し、世界歌謡祭でもグランプリ獲得。プロ志向のメンバーに入れ替えて「世良公則&ツイスト」としてレコードデビューを果たしました。

【橋本】 ポプコンって出場者たちのドラマもあって面白いですよね。他にもどんな出場者たちがいたのか気になります。

【中将】 番組の放送時間の関係で次に紹介するのが最後になってしまいます。チャゲ&飛鳥(CHAGE and ASKA)で『ひとり咲き』(1979)。チャゲ&飛鳥は実はデビュー前は7人組のバンドでした。1978年10月の第16回ポプコンに出場して入賞。この『ひとり咲き』で挑んだ1979年5月の第17回ポプコンも入賞止まりでしたが、ヤマハからの打診でCHAGEさんとASKAさんの2人組でデビューすることになったんですね。

【橋本】 こんな名曲でも入賞止まりっていうことはよっぽど層が厚かったんですね。

【中将】 『ひとり咲き』はASKAさんがポプコン向けに作った自信作で、前評価も高かったそうです。ですが、ASKAさんが最後のサビの構成を間違って歌った影響で演奏が乱れてしまい、グランプリを逃したとのこと……。

【橋本】 ここにもそんなドラマが……。しかし、つくづくすごいコンテストですよね。ちなみに他にはどんな方がポプコンからデビューされているんですか?

【中将】 グランプリをとらずともチャゲ&飛鳥のようにこれきっかけで注目された人まで含めると、そうそうたるメンツですよ。八神純子さん、渡辺真知子さん、因幡晃さん、佐野元春さん、長渕剛さん、円広志さん、スターダストレビュー、クリスタルキング、雅夢、杉山清貴&オメガトライブ、アラジン、あみん、TOM★CAT、辛島美登里さん……。

【橋本】 すごすぎる……日本の音楽を変えてます!

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