![](https://nordot-res.cloudinary.com/c_limit,w_800,f_auto,q_auto:eco/ch/images/1181873859399336063/origin_1.jpg)
5年ごとに行われる財政検証の結果が公表となりました。2019年の検証よりも、女性や高齢者の社会進出が進んだことなどにより、わずかながら改善という結果に。さらにその先のシミュレーションにおいても、いまの年金水準をキープできるシナリオもあり、希望をもてる内容も。しかし最悪のケースも可能性はゼロではないというものでした。みていきましょう。
平均年金月額・65歳男性16.7万円、女性10.9万円
5年ぶりに行われた「財政検証」。前回の検証時から、わずかながら改善する傾向になりました。ただこれは、働く女性や高齢者ら増えるという前提のもとであり、想定通りいくかは不透明であり、また人口減少期に入っている日本において、いずれ頭打ちになるのは時間の問題です。
また今後、日本に住む外国人も増加を見込んでいますが、昨今の円安から外国人労働者が日本を敬遠していることからも分かる通り、想定通り進むとは、こちらも不透明。
専門家は「楽観視すべきではない」とし、最悪を想定して自助努力を進めるべきだと警鐘を鳴らします。
今回の財政検証ではさまざまなシミュレーションを行っていますが、そのなかでひとつ、2024年時点で20歳の世代が、現在65歳の世代と同じ年金水準を確保できるという試算がありました。
まず、現在の年金世代の受給状況を確認していきます。
厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額は、併給となる老齢基礎年金と合わせて14万4,982円。通算老齢年金・25 年未満では6万3,538。また厚生年金保険(第1号)老齢年金受給権者の男性に限ると、特別支給の老齢厚生年金における定額部分の支給開始年齢の段階的引き上げが完了し、64歳の平均年金額は9万0,609円、65歳以上では16万7,388円と、64 歳までと 65歳以上で大きな違いが見られます。また女性についても同様で、64歳では4万9,763円、65歳以上では10万9,165円となっています。
また国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は、平均5万6,428円。さらに基礎のみ共済なし・旧国年の 老齢年金受給者の平均年金月額は5万1,607円となっています。
今の年金水準をキープというシナリオもあるが…
そして2024年度20歳の若者が、年金をもらうようになったことを考えてみましょう。
失われた30年といわれる昨今の日本。この経済の状況のままというシナリオ(過去30年投影ケース)では、受給開始時期65歳、就労期間20~59歳の40年、平均受給期間25年9月とした場合、所得代替率は50.4%。所得代替率とは、年金を受け取り始める65歳における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かというもの。2024年時点61.2%。つまり、いま20歳の若者たちが65歳で年金を受け取るのであれば、年金水準は2割ほど減少するというシナリオです。
経済の状態は同じ「過去30年投影ケース」でも、受給開始時期が66歳10ヵ月、就労期間が46年10ヵ月と6年強延長となり、平均受給期間が23年11ヵ月と、上記シナリオよりも2年弱短ければ、所得代替率は現状の61.2%水準を維持できるとしています。
また厚生年金の適用拡大など、いま議論として挙がっている制度改正をすべて行った場合は、所得代替率は現状をも上回る可能性も。
40年以上先が現状とライフスタイルであったり、制度下であったりということは考えにくく、意外と現実的なシナリオなのでは……そんな楽観的見方を、ついついしてしまうものです。
では今回の財政検証において、最悪のシナリオをみていきましょう。それは「1人アタリ成長ケース」。
実質賃金上昇率はわずか0.1%、実質的な運用利回りは1.3%、さらに実質経済成長率はマイナス0.7%という、目も当てられない状況。この場合、機械的に給付水準調整を続けると、2059年度に国民年金の積立金はゼロに。完全に年金支給のために必要な財源を、その時々の保険料収入から用意する賦課方式に移行。所得代替率は33~37%程度となり、実質的に現行の公的年金制度は崩壊するとしています。
――そんな最悪のことが本当に起こりうるのか
新型コロナで落ち込んだ経済は、どこの国も早く好転したのに対し、日本はとりわけ回復の鈍さが露呈。この先の経済の見通しも芳しくないと予想する専門家も多く、「100年安心」といわれている日本の年金制度も、いま現在20歳くらいの若者が高齢者になるころにはまったくカタチを変えていたり、年金という概念すらなくなっていたり……そんな可能性もゼロとは言い切れない状況にあります。
年金不安を口にしながらも、なんだかんだ、年金にお世話になる老後をイメージしている日本人。最悪、年金ゼロも想定して自助努力を続けていったほうが身のためかもしれません。
[参照]