「日本でヒットするエッセンスが入っていないと、結局は世界に広がらない」アニメ専門チャンネル『AT-X』の代表らに聞くアニメビジネスと配信事業の可能性【短期連載インタビュー】

By TV LIFE

アニメを見たい、もっと楽しみたいという方の新たな「きっかけ」になるアニメ紹介型動画配信サイト『AT-DX』。本動画配信サイトでは、各アニメ作品の配信に加えて、声優・俳優・アーティスト・お笑い・アイドルなど、さまざまな出演者によるオリジナルのアニメ紹介番組が展開されている。

TV LIFEでは、『AT-DX』各番組のプロデューサー・関係者の短期連載インタビューを実施! 第4回目は、エー・ティー・エックス代表取締役の東不可止(あずまふかし)と、『AT-DX』配信プロジェクトの池内矩史にインタビュー。後編となる今回はアニメ専門チャンネルで働く二人が思う、アニメビジネスの可能性や『AT-DX』で今後取り組みたいことについてお話を聞いた内容をお届けする。

◆アニメ専門チャンネルを運営するエー・ティー・エックスで働く東さん・池内さん。お二人は今後のアニメビジネスの可能性をどのように感じていますか?

東:僕がアニメ制作に関わっていた平成の時代と比べると、アニメを楽しむことの敷居はすごく低くなったと感じています。邦画の興行収入のベスト10はほぼアニメですからね。そう思うと、「アニメだから」とか、「アニメを」という視点で見なくてもいい時代になった気がします。アニメビジネスというよりも、映像ビジネス全体を考えたときにアニメカテゴリーもあるという目線で僕らもいないといけないのかなと。「アニメ専門だからアニメしかありません」という閉じた世界では、何もいいことはない気もします。

◆確かに、そうかもしれません。

東:ただ、ワールドワイドに広がっているという点で言えば、非常に手ごたえはあります。配信事業の発展により、日本だけじゃなくて、アジア・北米・ヨーロッパ、そして中東・アフリカと、ほぼ同タイミングでアニメ作品を見ていただける状態になりました。その分、ビジネスチャンスも広がっていると思います。我々はいくつものアニメ作品に出資させてもらっていますが、配信をきっかけにコンテンツが世界展開して、どこかの国でヒットするという可能性は、今まで以上にある気がします。ただ、例えばアメリカ受けを狙ったり、ヨーロッパ向けにアニメを作ったりしても難しい。やっぱり日本できちんとヒットするエッセンスが入っていないと、結局は世界に広がらないと私は思っています。

池内:今こうやって話を聞いていても思いますが、アニメビジネスは領域が広くなり過ぎていて、僕にはもうついていけないレベルまでいっちゃっている気がしています。

東:本当に川上から川下まで広がっています。そんななかで、エー・ティー・エックスは何をやってもいいのかなと。アイデアさえあれば。例えばアニプレックスさんやKADOKAWAさんは、フィギュアも展開されているじゃないですか。自分たちで監修をして制作まですることに取り組んでいらっしゃるんですよね。いいものを作って、欲しい人が買う。ああいうBtoCの取り組みは、お金をいただいてコンテンツを見てもらっている『AT-X』や『AT-DX』も近いと感じています。要するに、大事なのは対価以上のものを作っていけるかどうかだと思うんですよ。前回(前編記事)もお話しましたが、今や多くの配信サイトがあります。ただ、ユーザーの方が「得をしている」と感じてくだされば、やめることはないと思うんですよね。そう思っていただけるくらいに、サービスの価値を上げることが大切なのかなと。

◆貴重なお話ありがとうございました。まだ始まったばかりの『AT-DX』。今後はどんなことに取り組みたいですか?

池内:誤解を恐れずに言うと、僕はないですね。

◆ない!

池内:というのも、僕個人の意見なのですが、やっぱりアニメを見てもらいたいというのがいちばんなんです。これは体験談なのですが、前に後輩から『白い砂のアクアトープ』というアニメ作品を薦められて見たときに、泣いちゃったんですよ。これくらいいい作品が世の中にあると思ったのと同時に、知るきっかけがもっとあってもいいのではと思いました。その後、自分が担当する「あにめすこ~ぷ」という番組で『白い砂のアクアトープ』を取り上げたものの、上手く広めることができなかったんです。悔しかったですね。

そういう反省もありながら、『AT-DX』ではもっとうまく広げられる仕組みや番組作りができればいいなと思っています。それが硬派なトーク番組になることもあれば、バラエティに富んだ番組になるかもしれない。何がハマるかはやってみたいと分からないところもあるので、ひたすら探求し続けていかなければと思っています。期待していただけるのであれば、どういう番組が今後できあがるのか、見守っていただければ幸いです。

◆アニメに対する熱い思いが伝わってきました。

池内:僕だけじゃなくて、たぶん社内の人間全員がアニメへの熱い思いを持っていると思います。

東:エー・ティー・エックスという会社は、テレビ東京グループのなかでも傑出してアニメ好きが集まっていると自負しています。もっと言えば、私がお付き合いしているメディアを使ってお客様にアニメを届ける仕事をしているどの会社よりも、エー・ティー・エックスの社員のほうがアニメ好きだと思っています。社内の人間にも「私たちは日本一のアニメ好きが集まってキュレーションできる会社だから」と言っています。

◆社員がアニメ好きということに自信を持っていらっしゃるし、誇っていらっしゃるんですね。

東:はい。そうじゃないと『AT-X』の編成はお客さんから支持されないし、アニメファンの方から「分かっているね」と言ってもらえないと思っています。ただ、放送は24時間しかないですし、ウインドウがひとつなんですよ。一方の配信は、無限に作れるんです。尺やフォーマットも30分や1時間と決まっている訳じゃなくて、5分を20回流してもいいし、2時間やってもいい。何なら、早回しして見てもいいよくらいの番組があってもいいんじゃないかなと思っています。それくらい自由度が高いんですよね。可能性は色々とあると思うので、「何がやりたい」というよりも、アニメという軸であれば「何でもできる」状態でありたいと思っています。

◆その可能性のなかには、イベントやライブ事業などもある。

東:それができるようなフォーマットは考えています。ただ、お客さんが何を求めて集まっているのか、どういうコミュニティができるか次第かなと。提供することも大事ですが、ユーザーのニーズに応える形で自然発生的に実現できればいいなと思っています。目指すべきところは、テレビ東京で言えば「あちこちオードリー」や「きらきらアフロ」のイベントなのかもしれません。制作側が「どうですか?」とプレゼンするでもなく、お客さんから期待していただいてそれが高まって実現しました、という派生が美しいですし、両方に熱がある状態なので、イベントもより盛り上がるかなと。

◆もちろん、それぞれの番組パーソナリティの人気もあると思いますが、コンテンツにファンがいるからこそ、あれだけ盛り上がるイベントになっているんだろうなと、個人的には感じていました。

東:私もそうだと思います。各番組がそうなればいいですし、『AT-DX』に出ている方の新しい世界が広がっていい循環になればとも思っています。出演者の方にもアニメ業界にも大きなムーブメントを作るお手伝いができれば、我々としては嬉しい限りですね。

『AT-DX』サービス概要

■月額
480円(税込)
※一部番組はレンタルも可能。100円(税込)~、1週間視聴可能
※無料会員登録すると、『AT-DX』オリジナル番組が1話まるごと無料で見られるクーポンをプレゼント
■コンテンツ
『AT-DX』オリジナルのアニメ紹介番組、特集スタイルのアニメラインナップ、『AT-X』オリジナル声優バラエティ番組のアーカイブなど

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