『切らないたるみ治療』で「やけど」美容医療のトラブル増加「医師免許なしでの施術は『医師法違反』」厚労省が通知

脱毛や脂肪吸引といった美容医療で、やけどなどのトラブルが増加している。

こうした被害を防ごうと国が対策に乗り出した。

■『切らないたるみ治療』によるトラブル増加「マスク越しで通過する風だけで痛い」

引っかかれたような赤い傷。ある施術で被害に遭った。

先週行われた厚生労働省の検討会。

議題は「美容医療のあり方」。

いま、美容医療をめぐってはトラブルの相談が増え、問題となっているのだ。

全国に100以上展開する「SBC湘南美容クリニック」。

美容医療の一つ「HIFU(ハイフ)」と呼ばれる施術を10年前から行っている。

「ハイフ」とは超音波を照射して、シワやたるみを取るもので、数万円で受けることができ、『切らないたるみ治療』として、幅広い世代から人気があります。

SBC湘南美容クリニック 池内理絵医師:
20代の若い方から、上は60代、70代です。他のものに比べると比較的、頑張ったら手が届くかなという値段設定なので、受けていただきやすい

しかし、この施術をめぐって今増えているのが『神経麻痺』や『やけど』などの被害だ。

SNSより:
神経損傷して半年ぐらい笑えないくらい顔おかしくなった

SNSより:
顎下ハイフで火傷みたいな跡できてて最悪

被害に遭った女性:
年齢も年齢なので、たるみが気になっていたから引き締めたい思いはあった。
まさかあそこまでやけどするとは思ってなくて

■施術後すぐに痛み 家に帰ると顔が真っ赤に

当時40代の女性は3年前、エステ店で顔全体と、顎の下のハイフを1万円ほどで受けたが、施術後すぐに痛みを感じた。

被害に遭った女性:
サロンからマスクをして出たんですけど、マスク越しで通過する風だけで痛かった。お家に帰ったら真っ赤なんです全部。
これもしかして、一生残るのかなくらい深かったので、やけど痕が

皮膚科で処方された薬を塗り、およそ3週間でやけどの痕はなくなったが、シミが残った。

エステ店は友人の紹介だったこともあり、店には連絡することはできず、泣き寝入りの状態に。

被害に遭った女性:
一点気になるのが『このマシーンは新しいです』って言っていた。
『最近、導入しました』って。エステのハイフは一切行ってないです。本当に痛い目にあったので

■エステサロンでは6割以上が医師から研修を受けずに施術 明確なルールなく運用

こうした被害は2015年ごろから消費者庁に寄せられ始め、年々増えている。

2022年までに合わせて135件の被害の相談があった。

その原因の一つとされるのが『医師免許なしでの施術』。

■厚労省が「医師免許なしでの施術は『医師法違反』にあたる」と通知

これまでハイフに関しては、どのようなものが医療行為にあたるのか明確なルールはなく、エステサロンなどで医師免許のない人が施術したり、さらには機械だけを置いて、自分で施術をしたりする店もあり、ハードルが低くなっている。

消費者庁によるとハイフによる事故の件数のうち、美容クリニックでの被害はおよそ2割だったのに対し、エステサロンはおよそ7割。

そして、なかでもエステサロン店の6割以上が、医師から研修を受けずに施術をしていたことも明らかになった。

こうしたリスクを減らすため、湘南美容クリニックでは医師が患者の肌の状態を診察した後、施術方法を定めたマニュアルをもとに看護師が施術する。

SBC湘南美容クリニック 池内理絵医師:
何か治療を受けられることには、必ずリスクが伴います。正しい知識を持って照射しないと、効果が出ないものにもなりますし、医師法に即した方法での治療提供のみが、この世に存在するべき

こうした状況を受け、厚生労働省は6月「医師免許なしでの施術は『医師法違反』にあたる」と各都道府県に初めて通知を出した。

きれいになりたくて受けた施術で被害に。

少しでもリスクを減らすために明確なルール作りが必要だ。

■美容医療を受ける前の4つチェックポイント 「ハイフは医療行為だと認識を」

美しくなるためにケアを受けて、傷ついてしまう。

そうした美容医療のトラブルは増えている。

2019年と2023年を比べると、相談件数が3倍以上に増加。

この状況を受け、厚労省は6月27日、不適切な美容医療の対策に向け初めて会合を行った。

その中では「『自由診療』なので、指導や監査が限定的になっている」、「実際のトラブルはもっと多い」という指摘があった。

年内をめどに報告書がまとめられる方針だ。

美容医療に詳しい、ブランクリニックの加藤理事長は「美容医療の機器は、安全性が確認されていないものが多く、医師の責任のもとで使用可能となっている。治験を行い、安全性や効果効能の確認をしてからの使用を義務付けるべき」だと話した。

ジャーナリストの浜田敬子さんは美容医療に関しての規制について次のように話した。

ジャーナリスト 浜田敬子さん:
もともとハイフの技術は癌(がん)の治療とかに使ったものなんです。
なので医療行為として使っていたものなので、今回、厚労省が通達を出したことで、医療行為であると。
なので基本的には医師かそれに準じる医師の指導を受けた人がやるべきだと一歩進んだのは、分かりやすくなったと思います。
機器がほとんど輸入されているものなので、日本の薬機法などの対象外ということで、安全性に対しての基準がないというのも問題になっているので、機器に対しての基準、どういうものが安全性が担保されてるかという基準が必要。
もう一つは利用者への注意喚起。
皆さん知らないで、クリニックとエステのどちらでやるかを選んでいらっしゃると思うので、値段とかで選ぶんじゃなくて、やっぱり医療行為なのでクリニックでということを、どうやって注意喚起していくのかも大事だと思います

美容医療が身近になっている今だからこそ、こういった点に注意が必要だ。

消費者庁などが出している美容医療を受ける前のチェックポイント

・使用する薬などがどのようなものか自分でも説明できますか?

・効果だけでなくリスクや副作用などについても知り、納得しましたか?

・ほかの方法や選択肢の説明も受け、自分で選択しましたか?

・その美容医療は「今すぐ」必要ですか?

この4つに1つでもチェックが入らなかった場合や、チェックが入っても心配なことがある場合は、改めて医師に説明を受けた上で、よく考えてから施術を受けるか決めることが大切だ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月5日放送)

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