『ビリオン×スクール』はコメディ色が強い作品に 山田涼介と神木隆之介の息の合った芝居

山田涼介が主演を務めるドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)が、7月5日にスタートした。本作は、日本を代表する財閥系グループのCEOであり“億万長者=ビリオネア”の主人公・加賀美零(山田涼介)が身分を隠して高校の教師となり、さまざまな問題に直面しながら生徒とともに成長していくさまを描くオリジナルストーリーの学園コメディだ。

初回を観て最も印象深いのは、コメディ色がかなり強いということ。演出を担当するのは『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)シリーズの瑠東東一郎らということで、台本がなくともセリフ運びや空気感からアドリブ合戦に突入したことがなんとなく察することができる作りとなっている。加賀美とその秘書兼ボディガードでもある芹沢一花(木南晴夏)のやり取りが最も多いが、そこに加賀美が開発したAI教師のティーチ(安達祐実)を交えた会話や、光井ひかる(志田未来)、溝口信雄(坂口涼太郎)、土橋淳平(永野宗典)、堺宮子(MEGUMI)ら加賀美の同僚である教師たちとのシーンはほとんどがやりたい放題と言っていいだろう。堺が先導して溝口、土橋と歌い出す、大事MANブラザーズバンド「それが大事」のうろ覚えの2番には、加賀美……というか山田涼介が堪えきれずに笑みを見せてしまっている。

そんなドラマの色が徐々に浮かび上がってきた中盤に、謎の校務員・内巻雫としてサプライズ登場したのが神木隆之介である。山田とは学生時代の同級生で、プライベートでも親交のある2人がドラマで共演するのは約10年ぶり。2006年放送の『探偵学園Q』(日本テレビ系)、2014年放送の『金田一少年の事件簿N(Neo)』(日本テレビ系)以来3度目だ。先述した通り、本作には『探偵学園Q』のキャストである志田も参加しており、同じシーンはなかったものの、約17年ぶりに山田、神木、志田での共演が実現している。

加賀美と内巻のシーンは短いものの、山田と神木の息の合った芝居が炸裂している。「どこがアドリブでどこがセリフか! これを皆さんに観てほしい!」というリリースコメントにある通りに、内巻が加賀美にあった“いいこと”を当てる一連の流れ、さらにその後の「ほーうほほう。ほほんほんほほんほん」といった加賀美の脇を内巻がくすぐるといった行動、そして星座ランキングのくだり……と全てがアドリブにしか思えない! 唯一台本通りだと思われるのは、内巻が加賀美と一緒のおうし座であることを知り、「デスティニー!」と喜ぶ流れ。ベランダを後にする加賀美を内巻は冷たい視線で見つめる。

神木は第2話以降も内巻として登場することがアナウンスされており、今後彼のバックグラウンドが明らかになっていくことだろう。神木は主演を務めた朝ドラ『らんまん』(NHK総合)でも度々インサートされたアドリブが話題になっており、そういった意味でも本作での山田との念願の共演はタイミング的にもバッチリと言えそうだ。

山田としては本作が初の教師役となるが、演じる加賀美は社長でもあり、AIスーツを着て戦うヒーローでもある。ワイヤーアクションを用いた戦闘シーンは今後も見どころの一つとなっていくだろう。さらに印象的だったのは、加賀美を演じる山田の表情の豊かさ。そこにはアドリブシーンも相まっての、素に近い山田の表情も含まれていくかもしれない。

ストーリーは初回が3年0組の西谷翔(水沢林太郎)、第2話が梅野ひめ香(上坂樹里)と一人ひとりにスポットライトが当たっていくのだろう。「俺が殲滅してやる」(加賀美)、「そんなエヴァンゲリオンみたいに」(梅野)、「サービスサービスぅ!だ」(加賀美)という次回予告の幕切はパロディとして見事である。

(文=渡辺彰浩)

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