米国のインフレ緩和、労働市場は再均衡化=FRB金融政策報告書

Howard Schneider

[5日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は5日、議会に半期ごとに提出する金融政策報告書を公表した。物価情勢についてインフレは緩和したとしたほか、労働市場は「引き締まっているが過熱していない」という新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)前の状況を回復したとし、米経済は一段と正常な状況に着実に戻りつつあるとの認識を示した。

FRBは報告書で「インフレは昨年に著しく緩和し、今年に入ってからも緩やかな改善がみられた」と言及。住宅サービス部門については、価格上昇のペースがパンデミック前の水準に戻るのは時間の問題との認識を示した。

労働市場については「今年上半期を通して再均衡化が続いた」とし、「多くの分野で求人が減少したことで労働需要が緩和した一方、移民の急増を背景に労働供給は増加し続けている」と指摘。「労働の需要と供給のバランスは、労働市場が比較的逼迫していたものの過熱はしていなかったパンデミック直前の時期に似ている。名目賃金の伸びは引き続き鈍化した」とした。

パウエルFRB議長はこの報告書に基づき、9─10日に議会証言を行う。

<金融政策の独立性>

足元でトランプ前大統領が再選する可能性が高まっているとの見方を反映してか、報告書には「特別トピック」の1つとして「金融政策の独立性、透明性、説明責任」と題する短い論説が含まれた。トランプ氏が再選すれば、パウエル議長は2026年の任期満了前に退任に追い込まれる可能性がある。

論説では、FRBは何よりもまず議会に対して説明責任を負う一方、議会はFRBに政策金利の決定に関する「運営上の独立性」を与え、その決定が「短期的な政治的影響から隔離される」ようにする旨が示された。

さらに「長期的に雇用の最大化と物価安定をもたらす金融政策措置には、短期的な経済的コストを伴う抑制策が含まれる可能性がある一方で、生産と雇用を持続不可能なレベルまで引き上げる措置は長期的には実質的な利益がなく、インフレ率の上昇につながる可能性があることは広く理解されている」とし、中銀の独立性は確立された「国際基準」と指摘した。

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