日の丸選手団も“愛用”循環型ランニングシューズ パリ五輪でも注目

地球もアスリートも笑顔になる、最先端のシューズとは。

全体がほぼ真っ白でカラーリングされた最新のランニングシューズ。
男性、女性ともに親しめる洗練されたデザインですが、よく見ると、シューズのど真ん中に存在感たっぷりのQRコードがあります。

実はここに、地球環境に配慮したある画期的な工夫と、機能性でも決して妥協をしない日本のメーカーならではのこだわりがありました。

兵庫・神戸市にあるスポーツ用品大手アシックスの研究所。
そのアシックスが4月に発売したのが「NIMBUS MIRAI」というランニングシューズです。

アシックス フットウエア生産統括部マテリアル部・上福元史隆部長:
パフォーマンスとサステナブルをまず両立する。もう一つはリサイクルできるシューズ。

世界で1年間に生産される靴は約239億足。
そのうち95%がリサイクルされず、焼却か埋め立て処分されているといいます。

そこで、このシューズはリサイクルしやすいよう上部の素材をポリエステル1つに統一。
通常、複数の素材を組み合わせて作られていますが、ひもの先端部分やひもを通す穴など、特殊な加工を施すなどしてポリエステルに統一することで、リサイクルに必要だった素材ごとに分解する作業をなくしました。

回収後は粉砕、ペレット状にして糸へと変わり、最終的に生地にまで再生して新たなシューズへと生まれ変わります。

そして、もう一つの工夫が、シューズの上部と靴底をつける接着剤です。
通常の接着剤は一度つければ剥がれることはほぼありませんが、ある一定の熱を加えることで簡単に剥がせるようになります。

剥がした靴底は粉砕し、運動用のマットなどに再利用します。

そして注目は、シューズに付いているQRコードです。
スマホで読み込むことで、リサイクルのための集荷を依頼できます。

回収はもちろん無料で、リサイクル後に2000ポイントがたまり、新しいシューズを購入する際などに利用できます。

環境に配慮した循環型のランニングシューズですが、耐久性や機能性においてもアシックスの最新の技術が盛り込まれています。

耐久性を測るための“屈曲試験”で、実際の走る動きに合わせて、どの部分にどのくらいの負荷が掛かるのか何千、何万回と試します。

そして、シューズに特殊なセンサーを付けて行われるのは、地面からの反発を測定するための“反発試験”です。
走った際に、地面から受ける反発の強さや方向を瞬時に測定します。
そこから得られたデータを生かして、ランナーの力を最大限に引き出します。

「NIMBUS MIRAI」を実際に履いて走った記者によると、「クッション性、安定性、反発などランニングシューズとして、しっかり機能性も担保されている、そんな印象がある」といいます。

実はこのシューズはパリオリンピック・パラリンピックの開会式などで、日本の選手団が履く予定で、史上最もサステナブルな大会を目指す今回も注目されています。

アシックス フットウエア生産統括部マテリアル部・上福元史隆部長:
お客さまと一緒になって最終的な(リサイクルの)円を描くという意味で、われわれは半分の円をプロダクトの面で、回収の半分の円はお客さんと一緒に作らないと完成しない。CO2削減する意味では、いろんなトライアルが必要で、このサーキュラリティという取り組みもその1つ。

環境、そして機能性にも生かされている“日本の匠の技”に世界が注目しています。

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