「あっけなさがせつない」トラウマ必至…ガンダム作品「あまりにも不運すぎた」退場劇

『機動戦士ガンダム』DVD-BOX1(バンダイビジュアル)

『ガンダム』シリーズは、戦争をテーマにした作品である。それゆえに、キャラクターが死亡してしまう展開は避けては通れない。しかしなかには「え、そんなことで!?」と、あまりにも不運すぎる退場を迎えるキャラクターも存在する。予期せぬトラブルや不運な出来事に巻き込まれ、あっけなく命を落とす彼らの姿は、ファンに衝撃と虚しさを与える。

そこで今回は、『ガンダム』シリーズで起こった「不運すぎた」退場劇を振り返りたい。

■わき見運転が原因で死に至ったカツ・コバヤシ

一人目はカツ・コバヤシだ。初代『機動戦士ガンダム』でサイド7の戦災孤児カツ・ハウィンとして登場。レツやキッカとともにホワイトベースクルーの癒しとなる存在だった。そして一年戦争後、ハヤトとフラウの養子となりカツ・コバヤシと名を変える。

続編『機動戦士Zガンダム』に、15歳に成長した姿で登場したカツは、カミーユ・ビダン以上に生意気で反抗期全開のキャラとなっていた。

宇宙に上がることを拒絶したアムロの代わりとしてクワトロ・バジーナと宇宙に上がるも、単独行動、無断出撃、ストライキ、さらにはアーガマにスパイとして潜入したサラ・ザビアロフに熱を上げ、逃亡の手助けをするなど何かと問題行動が目立っていた。

そんなカツは、第49話「生命(いのち)散って」でGディフェンサーで出撃。ガンダムMk-IIとドッキング後、エマに戦線を離脱するよう促されるも「まだ戦えます!」と言い、コア・ファイターで戦い続ける。そして「そんな弾に当たるもんか!」と調子づいているところ、前方不注意で隕石への衝突……。さらにヤザンのハンブラビによって機体を撃たれてしまう。

意識朦朧とするなか、先の戦闘で死亡したサラが意識のなかに現れる。そこでも「カツ 人は正直過ぎてはいけないのよ」と軽くいなされながらも、「あなたと出会えて本当によかったわ」と言われるのであった。

そして最期は、サラミス改と思われる残骸に正面衝突して大爆発を起こし退場……。サラと心を通わせていたのは、せめてもの救いだったように思う。

なかなか問題行動の多いカツだったが、カミーユをはじめ、たびたび味方の窮地を救っているのも事実だ。

たとえば、第46話「シロッコ立つ」では、ジ・ O に乗るシロッコを撃墜寸前のところまで追い詰めている。仮にこのときサラが盾になってシロッコを助けていなければ、グリプス戦役の英雄はカツになっていたかもしれない。それだけにカツの最期は非常に残念なものだった。

■流れ弾に当たったアストナージ・メドッソ

シリーズ屈指の名メカニック、アストナージ・メドッソ。彼の死も非常にあっけないものだった。

アストナージは、『機動戦士Zガンダム』『機動戦士ガンダムZZ』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』と、歴代主人公の機体を整備してきた人物である。個性の塊のような最新鋭のMSを次から次へと補修・整備しているところを見ると、非常に優秀な人物であったのは間違いない。

また、クルーとしても非常に魅力的な人物で、『Z』ではカミーユ・ビダンから機体について文句を言われると、すぐさま反論。『ZZ』ではジュドー・アーシタをはじめとするどこか調子のいいシャングリラの少年少女たちを叱咤激励する、良き兄貴分となっていた。

そして『逆襲のシャア』では、ブライト・ノア、アムロ・レイのいるロンド・ベル隊に所属し、メカニックとしてラー・カイラムに乗り込む。そこでは、同隊のパイロットであるケーラ・スゥと恋人関係になっている様子もあった(考えてみれば、ここから死亡フラグが立っていたのかもしれない……)。

リ・ガズィに乗り、ケーラが出撃。アストナージは「とっておきのサラダ作っとくからな」と言って送り出すも、直後の戦闘でケーラは死亡してしまう。

そして、アストナージ自身も、大破したリ・ガズィで出撃しようとするチェーン・アギを制止しようと甲板に出ていたところ、ビームの流れ弾が当たり爆風に巻き込まれ命を落とした。その後に残った無重力空間を生気なく漂うかつての名メカニックの姿は、あまりにも虚しいものがあった。

■バウンドした巡洋艦に押しつぶされたウッソの母、ミューラ・ミゲル

最後に紹介するのは『機動戦士Vガンダム』に登場したミューラ・ミゲルだ。

ミューラは、本作の主人公ウッソ・エヴィンの母であり、レジスタンス組織リガ・ミリティア創設者の一人であるハンゲルグ・エヴィンの妻、さらにリガ・ミリティア活動初期からモビルスーツ開発に貢献した優秀な技術者で、V2ガンダムの開発者でもある。

ミューラは、“母”としての愛情はあったが“技術者”としての側面のほうが強く、ハンゲルグとともにウッソへ英才教育を施し、そして12歳だったウッソを残してV2の設計図を持って月にあがる。

その後、月面都市セント・ジョセフでウッソと再会。久々の母子水入らずの時間を過ごすも、間もなくザンスカール帝国に囚われ軟禁状態となってしまう。

第36話「母よ大地にかえれ」で、ゴズ・バールの乗るゾリディアに生身のまま握られ、“人間の盾”として使われたミューラ。圧倒的な性能を持つV2ガンダムに対抗するためとはいえ、このあまりにも非人道的な作戦に、あのカテジナ・ルースさえも「やってはいけない作戦というのがあります」と言っていた(その後のカテジナの数々の所業を見ると「お前が言うな」とも思うが……)。

必死に母を救出しようとするウッソは、なんとかゾリディアの両脚を切断し動きを止める。しかし、ゾリディアはミューラを掴んだまま戦艦アドラステアの砲身の間で身動きが取れなくなってしまった。

そんな状況のなか、不運にも前方を走行していた巡洋艦リシテアが悪路をバウンドしてしまい、その後ミューラのいるアドラステアの砲身部分に飛んでいってしまう。

ウッソのV2ガンダムもシールドを張って受け止めようとするが、さすがに巡洋艦の質量は止めることができず弾き飛ばされ、あえなく待避。そしてミューラはゴズ・バールのゾリディアとともにリシテアの車輪に押しつぶされてしまい、凄惨な最期を遂げた。

戦闘終了後、ミューラの遺品として回収されたヘルメットを抱えるウッソ。「よくわかりません…母さんです…」と言ってマーベットに渡すのだが、そのヘルメットがズシリと重いというシーンが壮絶過ぎて忘れられない。

今回は、『ガンダム』シリーズで起きたあまりにも「不運すぎた」退場劇を紹介してきた。いずれのキャラもその活躍とは裏腹に、あっけない最期となってしまい、非常に悔いが残る残念なものだったように思う。しかし退場したのち、カツがカミーユの前に思念体として現れた際には、非常に吹っ切れた様子だった。残りの2人もそうであってほしいと願ってしまう……。

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