谷崎潤一郎の処女作に着想、兼島拓也脚本×河井朗演出による新作『刺青/TATTOOER』がロンドンに進出!

脚本家・兼島拓也と演出家・河井朗(ルサンチカ)が初タッグを組む新作『刺青/TATTOOER』が、ロンドンのチャリングクロス劇場で上演されることが明らかになった。梅田芸術劇場と英国チャリングクロス劇場が共同で演劇作品を上演する日英プロジェクトのひとつとして実現、英国公演に先がけ、東京・アトリエ春風舎での上演も決定している。

原作は、谷崎潤一郎の『刺青』。清吉という評判の高い若手刺青師(ほりものし)の物語だ。清吉の長年の願いは「美女の肌に己の魂を彫り込むこと」であったが、理想の相手に出会えずにいた。ある日、清吉のもとにその理想の女性がやってきて……。

兼島による書き下ろしで、谷崎の原作の魅力そのままに、オリジナリティ溢れる新たな『刺青』として立ち上がる。10月の英国公演は、新進気鋭の脚本・演出家である加藤拓也のオリジナル作品、『One Small Step』との連続上演となる。日本の若手クリエイターと英国クリエイター、日本在住の俳優と英国在住の俳優がコラボレートする本作により、演劇の本場、ロンドンに日本演劇界からの新風を吹き込む。梅田芸術劇場がチャリングクロス劇場で舞台作品の上演を手がけるのは、2019年のミュージカル『VIOLET』に始まり、これが3作目。ふたりの若き才能を英国に紹介する公演として、注目される。

■脚本・兼島拓也 コメント 谷崎が描いた、刺青を彫る人と彫られる人の間の秘匿的で閉じた関係。実はその中にあちこち穴が空いていて、不意に外部と繋がってしまう。作品を読み返すうちに、そんな「広がり」が垣間見えたような気がしました。刺青は単なる模様ではなく、皮膚に空いた穴から外部が流し込まれ、同時に内部が皮膚の外に漏れ出してしまう、そんな現象のことを言うのではないか。外部の侵入を許し、あるいは自己が漏れ出てしまう。その脆弱さ故に自他の境界が曖昧になる。そこに刺青の妖艶な魅力があるのではないか。谷崎の筆に便乗し、強硬な支配/被支配関係とそれが反転する快楽に執着した先には、他者と結びついて溶け合ってしまう契機が見出されるのではないかと思っています。

■演出・河井朗 コメント 刺青は針で皮膚を傷つけ、そこに色を入れていく行為です。傷も彩られると芸術と呼ばれます。そのひと針ひと針には、様々な思いが込められていることでしょう。決して後戻りできない瞬間の連続を委ねることができるのは信頼できるアーティストと、大切にしたい気持ちがあってこそだと思うのです。日本では秘匿を美徳と考える人がいます。日本でお会いした彫り師の方は、着物の袖からチラッと見える刺青が粋なんだと教えてくれました。それは、誇らしいからこそ自分だけのものにしたいという欲なのだと私は考えています。皆さんがこれまでの人生で獲得した「傷」に、私たちがインクを垂らすことができたらどんな絵が浮かび上がるのでしょうか。あなたの体に宿る芸術はどんな姿なのでしょうか。楽しみにしています。

<公演情報>
『刺青/TATTOOER』

脚本:兼島拓也
演出:河井朗

■日本公演
日程:2024年9月20日(金)〜9月23日(月・休)
会場:東京・アトリエ春風舎

■英国公演
プレビュー:2024年10月14日(月・祝)〜10月16日(水)
本公演:2024年10月18日(金)〜10月26日(土)
会場:ロンドン・チャリングクロス劇場

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