ドコモとソフトバンク、シェアサイクル事業子会社が業務提携 親会社間の連携は否定

NTTドコモ傘下のドコモ・バイクシェアと、ソフトバンク傘下のOpenStreetは7月10日、業務提携に合意したことを発表した。

ドコモ・バイクシェアの「バイクシェアサービス」と、OpenStreetの「HELLO CYCLING」で利用できる電動アシスト自転車を、双方のポートで利用・返却できる「ポートの共同利用」の2025年度の実現を目指す。具体的な仕様などは現在両社で協議中としている。

バイクシェアサービスとHELLO CYCLINGは、これまでも一部で同一の敷地を分割し、それぞれのポートを設置していた。

業務提携により、双方でリアルタイムに在庫情報を共有するシステムの連携、車両側で相手企業のポートへの返却を判定する仕組みの構築、双方の利用料金を案分するシステムを設計・構築する。双方の自転車を双方のポートで利用できるようにすることで、土地利用の効率化、顧客の利便性の向上を図るとともに、自転車の再配置やバッテリー交換も協業。オペレーションの効率化と利用環境のさらなる向上を図るという。

また、資材でも共同調達を実施する。両社が採用する車体や車体の修理用備品、ポートのラックなどは共通の備品が多いため、よりコストパフォーマンスが高い事業の運営が可能になるという。業務提携によりシェアモビリティ事業の基盤強化を目指すとしている。

ドコモ・バイクシェアは現在、自社が運営主体となる直営モデル、運営事業者にシステムを提供するシステム提供モデルの2種類を展開し、全国58のエリアで約3770のポートを用意している。一方OpenStreetも、自社運営のHELLO CYCLINGのほか、「ダイチャリ」といったパートナーとの連携モデルを展開。25都道府県の361市区町村で8500以上のポートを用意しているという。

OpenStreet 代表取締役社長CEOを務める工藤智彰氏は、事業における課題感を説明。ドコモが都心で事業を開始後、ソフトバンク傘下のOpenStreetが周辺地域を埋めていったと歴史を振り返りつつ、「日本のシェアサイクルは自治体との連携が軸になっているため、それぞれが組んだ自治体ごとでエリアが分かれてしまった。混ざりだしている部分もあるが、利用者としては不便。鉄道の乗り入れはもはや当たり前で、親会社の携帯電話事業もMNPで自由に動けるようになっている。ユーザーの利便性を考えれば、同じレイヤーの事業が会社都合できれいに分断されている状況は望ましい状態とは言えない。シェアサイクルはここ数年で始まった事業で、サービスエリアを広げるために1自治体・1箇所ずつを取り合う競争をしていた結果でもあるが、そういうフェーズは終わった」と、提携に至った背景を話す。

また、基本的に道路が狭く空き地が少ない、ある程度まとまった土地がある場合も駐車場として運営した方が収益が高いなどの日本特有の事情も紹介。ポートの確保が困難で、今あるポートを有効活用する必要があることも加えた。

一方、両社は2025年度のポートの共同利用を目指すとしている。実現に向けては、特に運用面の課題があるようだ。

ドコモ・バイクシェア 代表取締役社長を務める武岡雅則氏は、「連携を開始するとなると、例えばバッテリーの交換作業一つをとっても、相互のバッテリーを回収して充電することで、お互いの資産が混在していく。エリアやオペレーション、(直営でない場合は)法人格などもそれぞれ異なる中で、それぞれの事業の中で採算性が取れるバランスに持っていく。これは今まで未経験のところ。単にエリアが広がってお客様が便利というだけでなく、オペレーションの効率化で事業性も合わせて担保したい」と説明。まずは1箇所でノウハウを磨き、勝ちパターンを見定めて順次他のエリアに展開したいと話した。

また、今回はあくまでキャリア傘下の2社間における取り組みとなる。「個別の事業体における業務提携であり、キャリア同士で何か話し合って連携をしている、もしくはそのための最初の取り組みという位置付けでは全くない」(工藤氏)と、親会社の事業に影響を与える物ではない、シェアサイクル事業に限定した取り組みと語った。

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