コンゴ:誰一人として取り残してはならない──人命を奪う「はしか危機」に立ち向かう

現地の子どもに予防接種の注射を打つMSFスタッフ © MSF

コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)の赤道州。そこにインゲンデという町がある。その一帯で、はしかが新たに流行していることを受け、国境なき医師団(MSF)は緊急対応に入った。子どもたちを対象にした治療と予防接種が主な目的だ。

はしかがインゲンデで流行したのは、今回が初めてではない。昨年も、はしか急増の事態が起こっていた。その際、コンゴ保健当局は「後追い接種」を実施している。しかし、現地入りできなかった地域もあり、実際に予防接種を受けたのは、子どもたち全体の80%にとどまった。

結局、当時は、はしか流行を食い止めることができなかった。はしかは感染力が強い。感染者の周囲に未接種者がいれば、その90%が感染する確率となる。

MSFはコンゴ保健省と協力して予防接種キャンペーンを実施している © MSF

見過ごされている人がいる限り、ウイルスは広まり続ける

2023年の集団予防接種が中途半端に終わったことから、2024年に、はしか患者が再び急増した。MSFは、コンゴ保健省を支援する形で、予防接種率向上と患者治療に取り組んでいるところだ。活動地は、病院2カ所と診療所4カ所である。 「コンゴには赤道直下の森林地帯があります。そのへき地まで辿り着くには、輸送上クリアすべき課題がいくつもあるんです」

冷蔵保存されたワクチンをオートバイで輸送するMSFスタッフ © MSF

そう語るのは、コンゴでMSFコーディネーターを務めるジャンジャック・ステファン・ヌフォンディビエだ。 「インゲンデは18の保健区域に分かれますが、その半数以上は、現地入りそのものが難しいんです。地元の保健当局には、それら全てのエリアをカバーできるほどの輸送リソースがない。ワクチンは冷蔵保存しなければ使えなくなりますから、徒歩で運ぶわけにもいかない。

そこで、MSFでは、バイクと木製モーターボートを用意しました。全ての保健区域に確実に辿り着くためのものです。今回の集団予防接種を成功させる上で欠かせません」 こうした輸送面の支援だけではない。MSFでは、今回の対応において、これまで見過ごされてきた僻地の先住民など、あらゆる地域の人びとに目を向けていくよう力を入れている。 インゲンデにおいてMSFチームを指揮したトマ・オレバンガ医師は、次のように説明する。 「確かに、そのような顧みられない地域があった。それゆえ、現地では、予防接種キャンペーンに対して、不満や不信を抱く人びともいたのです」

はしかに関しては、誰一人として取り残されるべきではありません。見過ごされる人びとがいる限り、ウイルスは広まり続けます。

「あらゆる地域の住民が、はしかに関する知識を高め、治療や予防接種に参加していく。それが私たちの狙いであり、なんとか一定の成果を得ているところです」

MSFによる集団予防接種は、4月24日から5月13日までの間、2段階に分けて実施された。インゲンデの18保健区域において、6カ月から9歳までの子ども6万2645人を対象に実施され、ほぼ100%の接種率を達成している。

はしかワクチンに加えて、5種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日せき、B型肝炎、Hib感染症)と13価肺炎球菌ワクチンの接種を1万1740人の子どもが受けた。

加えて、MSFチームは、はしかの子ども649人、マラリアや重度の急性栄養失調の子ども1000人以上を治療した。また、半年以上機能していなかったインゲンデ拠点総合病院の掘削井戸を修復している。

負けられない闘い

コンゴでは、はしかの流行が何年も続いている。致死率も高い。定期予防接種および後追い接種が不十分であるためだ。2023年には、はしかの症例が30万件以上も記録されており、6000人近くが死亡している。

先ほどのヌフォンディビエが、次のように語った。

「コンゴでは、とりわけ東部における安全保障問題や人道問題が大きな課題となっています。しかし、一方で、はしか問題もまた危機的状況にあることを見過ごしてはなりません。

はしかは、今もなお多くの人命を奪う病気です。MSFにとって、この国における緊急対応の大半は、はしかに対するものなのです。定期予防接種から後追い接種に至るまで、あらゆる取り組みが必要です」

苦しくても負けられない闘いです。何千もの子どもの命がかかっているのですから。

このキャンペーンに無数の子どもたちの生命がかかっている © MSF

MSFは2023年、コンゴでの複数回のはしかの流行に対応した。160万人以上の子どもに予防接種を行い、4万6348人の患者を治療している。

© 特定非営利活動法人国境なき医師団日本