【F1第12戦無線レビュー(1)】「いいコールだ」絶妙なタイミングのピットインで順位を上げたフェルスタッペン

 2024年F1第12戦イギリスGP。今年のイギリスGPは、イギリス人ドライバーがトップ3からスタート。ドライからウエットに変わる難しいコンディションのなか、上位勢はわずかの差でポジションを上げた者、下げた者に別れる展開となった。イギリスGP前半を無線とともに振り返る

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 決勝レースの行われた日曜日は昼過ぎまで雨が降り、グリッドに向かうドライバーたちはインターミディエイトタイヤを装着した。ここでピエール・ガスリー(アルピーヌ)に問題が発生した。

カレル・ルース(→ガスリー):問題がある。ギヤボックスのようだ。

 ガスリーはフォーメーションラップを終えてガレージに入り、1周もせずレースを終えた。

 スタートでは直後の混乱状態のなか、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)がフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)と接触する。

アルボン:左フロントにダメージを負ったみたいだ。
ジェームズ・アーウィン:空力にダメージがあるようだ。プレッシャー(タイヤの内圧)には、問題ない。

 すぐ後ろを走るローガン・サージェント(ウイリアムズ)もピットに報告した。

サージェント:アレックスのクルマから大きなパーツが取れそうだ!

2024年F1第12戦イギリスGP アレクサンダー・アルボン&ローガン・サージェント(ウイリアムズ)

 スタートタイヤは全車がスリック。しかし雨雲が刻々とサーキット上空に迫っていた。いつ、どの方向から来るのか。チームによって異なる情報が錯綜した。

2周目
ピーター・ボニントン(→ルイス・ハミルトン):25分後に雨だ。

4周目
ウィル・ジョゼフ(→ランド・ノリス):6周目に軽い雨が来そうだ。T15(ストウ)だね。

6周目
ジャンピエロ・ランビアーゼ(→マックス・フェルスタッペン):雨の可能性が増している。16周目あたりだ。

9周目
ブライアン・ボッツィ(→シャルル・ルクレール):雨が降る。強そうだ。

2024年F1第12戦イギリスGP スタート

 実際には17周目前後から小雨が降り始めた。結果的にはレッドブルの気象分析が、一番正確だったことになる。11周目以降、上位勢の無線でのやりとりが慌ただしくなった。

11周目
ジョゼフ(→ノリス):10分後に雨が来る。その時にどうするか。シンプルな決断で行こう。

トム・スタラード(→オスカー・ピアストリ):雨粒がターン7から来るぞ。そのあと、ターン11で雨だ。
ピアストリ:あちこちで、もうパラパラ来てるよ。

ランビアーゼ(→フェルスタッペン):最初の雨は5分続いて、すぐに止む。そのあとは、長く降る。

15周目
ジョージ・ラッセル:誰か飛び出したら、教えてくれ。雨が少し強くなっている

16周目
ボッツィ(→ルクレール):すぐに強い雨がくるぞ

 ハーフウエット路面でのマクラーレンは速い。ノリス、ピアストリが、3番手まで上がっていたフェルスタッペンを次々に抜いて行った。フェルスタッペンに「焦るな」とランビアーゼが指示する。

2024年F1第12戦イギリスGP ランド・ノリス(マクラーレン)がマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をオーバーテイク

17周目
ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ターゲットは、この雨を生き残ることだからな。

 18周目、首位を行くラッセルをハミルトンがパス。直後に2台は揃ってコースオフを喫し、それでもすぐにコース復帰。3番手ノリスのすぐ前で戻ってきた。「危険な運転だ」とノリスがアピールする。

18周目
ノリス:ふたりとも、あまり安全ではない方法で戻って来たぞ

 しかしスチュワードが動くことはなかった。

 19周目、シャルル・ルクレール(フェラーリ)とセルジオ・ペレス(レッドブル)がインターミディエイトに履き替える賭けに出た。しかし雨は思ったほど降らず、2台は最後尾近くまで後退してしまう。

20周目
ペレス:路面が乾きすぎているよ。

2024年F1第12戦イギリスGP セルジオ・ペレス(レッドブル)

21周目
ボニントン:そろそろインターのタイミングじゃないか。どう思う?
ハミルトン:いや、まだ大部分、乾いている。

ボッツィ:スリックの方が3〜4秒速い。タイヤを殺さないよう、気をつけてくれ。雨が強くなるのを待とう。
ルクレール:強く降ることなんて、ないんじゃないか? もうタイヤがダメになりかかってる。とにかく天気のアップデートを頼む。
ボッツィ:3周後に雨だ、3周後だ。
ルクレール:だったら、全然話は別だ。
ボッツィ:とにかく今のタイヤを持たせるんだ。

 結局、ルクレールのインターは壊れてしまい、2セット目のインターに履き替えるはめに。戦略は完全に裏目に出た。

2024年F1第12戦イギリスGP シャルル・ルクレール(フェラーリ)

 対照的に、ここで息を吹き返したのがフェルスタッペンだった。

26周目
フェルスタッペン:ここでピットインかも。
ランビアーゼ:了解だ、マックス。
フェルスタッペン:これから強く降るだろ?

 26周目。再び雨が降り始めた機会を逃さず、5番手のフェルスタッペンが真っ先にピットイン。インターに履き替えた。ノリスやハミルトンも1周後にあとを追ったが、フェルスタッペンはこれで3番手に上がった。その判断を、担当エンジニアのランビアーゼが賞賛した。

28周目
ランビアーゼ(→フェルスタッペン):いいコールだった。優勝争いに戻ったぞ
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F1第12戦無線レビュー(2)に続く

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