考古学先行理念で長城を保護修復 北京市

考古学先行理念で長城を保護修復 北京市

4日、箭扣長城121号敵台頂部の北東隅にある旗杆墩遺構。(北京=新華社記者/羅鑫)

 【新華社北京7月11日】中国北京市懐柔区で実施されている箭扣(せんこう)長城第5期保護修繕プロジェクトの現場では、考古学関係者や修繕作業員などが炎天下で作業に追われていた。120号敵台(防御施設)北側の崩落箇所では、崩れた壁体の砂や石に入り混じった「石雷」(石に火薬を詰めた手投げ爆弾)などの遺物の発掘が待たれる。周囲に散乱したれんがは作業員によって整然と積み上げられ、長城を修復する重要な材料になる。

 プロジェクトの現場責任者を務める北京市考古研究院の尚珩(しょう・こう)副研究員は「4月から121、120号敵台を発掘し、これまでに建築部材や守備兵の武器・生活用品など100点(組)余りが出土した」と紹介した。

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4日、箭扣長城121、122号敵台間の発掘調査で確認された止水れんがと排水口。(北京=新華社記者/羅鑫)

 箭扣長城では2016年以降、市が数回の保護修繕プロジェクトを実施している。第5期は東区間にある117~122号敵台と敵台を結ぶ城壁を保護、修繕する。作業区間の全長は東の牛角辺から西の正北楼までの約915メートル。

 尚氏によると、第5期プロジェクトは、修繕前に念入りな調査を実施する「考古学先行」理念に基づき4月から発掘調査を開始。発掘を通じて長城の形状や施工法を明らかにし、損傷の原因を探った。同時に科学技術考古学などの手法を用いて建築材料の供給源と製造技術、沿線の環境景観などを研究し、長城の文化的要素を掘り下げた。

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4日、箭扣長城120、121号敵台間の便門遺構について説明する第5期保護修繕プロジェクトの現場責任者、北京市考古研究院の尚珩副研究員(手前左)。(北京=新華社記者/羅鑫)

 考古学先行理念は北京の長城に関する多くの謎を解き明かし、今後の保護修繕により多くの指針を提供した。尚氏は「目立たない石ころはこれまでの修繕作業で取り除かれたかもしれないが、今では発掘調査で歴史的価値が見いだされており、今後の修復作業では保護するか、歴史的景観の復元に用いていく」と語った。(記者/羅鑫)

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4日、箭扣長城120号敵台付近で作業員が積み上げたれんが。今後の長城修繕で重要な材料になる。(北京=新華社記者/羅鑫)

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4日、箭扣長城121号敵台からの景色。(北京=新華社記者/羅鑫)

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