「3分の2」の意味、浸透せず 「考える余裕ない」

 参院選では、憲法改正に賛成する「改憲勢力」が、国会での改憲発議に必要な3分の2以上の議席数を確保するかが焦点だ。神奈川新聞は9日、県内で100人の有権者に「3分の2」の意味を尋ねたところ、67人が「知らない」と回答。選挙結果が改憲発議に密接に関係することについて、有権者に浸透していない実態が浮き彫りになった。

 憲法改正案の国会発議には衆参両院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要。衆院では自民、公明など「改憲勢力」が定数の3分の2を超える議席を持ち、参院選の行方が注目される。■「全く分からない」 しかし、改憲の仕組みを知る有権者は少ない。選挙戦最終日、県内各地で「3分の2」の意味を質問したところ、約7割が「知らない」と答えた。

 子育て中の主婦(46)は「ニュースとか全然見ないので、全く分からない」と見当もつかない様子。アルバイト男性(32)も「日々の生活をどう維持するかで精いっぱい。考える余裕はない」と話した。

 意味を取り間違えている有権者も少なくなかった。男性会社員(36)は「与党が単独で法案を何でも通せるということ?」と話し、「衆議院の再議決」と混同していた。他にも「若者の投票率?」(男子大学生)や、「与野党の比率?」(女性会社員)といった回答があった。■「改憲語らず、ずるい」 一方、「知っている」と答えた人は33人。男性会社員(40)は「新聞を読んでいるので、意味は知っている」。改憲に賛成という男性会社員(49)は「米国が作った憲法で問題。自分たちで作らないと。自民党の憲法改正草案はまっとうだ」と話した。

 自民党は2012年4月、改憲草案を発表。インターネットで全文を公開している。しかし、「改憲草案を読んだことがある」と答えたのは100人中わずか15人。有権者の大半は改憲草案の中身を知らなかった。

 安倍晋三首相は年頭会見で、参院選の争点として憲法改正を掲げる考えを表明した。ただ、参院選では改憲の中身についてほとんど言及しなかった。その姿勢に、有権者から「争点隠し」との批判も上がる。

 公務員男性(49)は「選挙に勝つために景気対策などを強調するが、改憲問題を前面に出して訴えていないのはずるい」と憤る。これまで自民党に投票してきたという女性(72)は「選挙戦では改憲を封印しているが、選挙が終わった途端、改憲に向けて動きだすのでしょう。今回だけは自民党に入れたくない」と語気を強めた。◆憲法改正手続き 改憲案は衆院では100人以上、参院では50人以上の議員の賛成があれば提出できる。衆参両院の憲法審査会での審査を経て、衆参それぞれの本会議で総議員の3分の2以上が賛成すると60〜180日の間に、全有権者が対象となる国民投票が行われる。有効投票総数の過半数の賛成で承認される。

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