箱根のシカ食害知って 影響や対策紹介24日まで特別展

 箱根町でのニホンジカによる食害の現状などについて知ってもらおうと、箱根町元箱根の箱根ビジターセンター(VC)で特別展「箱根のシカ」が開かれている。シカの生態、シカが増えることにより心配される影響を解説している。同VCは「共生を考えるきっかけにもなれば」と話している。県、町、同VCなどで構成される箱根自然解説活動連絡協議会の主催で、24日まで。

 同VCによると、町内のシカは江戸〜明治期に捕り尽くされたと考えられていたが、1980年代ごろから目撃情報が寄せられるようになった。環境省箱根自然環境事務所によると、現在85〜1270頭程度が生息すると推計される。

 2014年度に捕獲された6頭のシカを対象に行ったDNAの解析調査で、丹沢、伊豆半島に生息する個体群とDNAタイプの特徴が一致していることが分かっており、両地域からの侵入が考えられている。

 現在、シカによる食害は町内の広域に及ぶが、「被害に濃淡がある」(同事務所)。南西部の静岡県境にある三国山周辺では常緑低木樹のアオキの新芽などを食べられるといった被害が多く確認されている。箱根以上に被害が深刻化している伊豆半島の付け根の部分にも当たり、同事務所は「林が続くなど侵入しやすい条件があり、エサを追ってきているのでは」とみる。多様性の喪失といった、植生や生態系への影響が懸念される。

 同事務所は昨年3月に対策検討委員会を設置、国の天然記念物に指定されている植物群落の周辺で被害が出ていることなどから仙石原湿原を対象に高さ約2メートルの植生保護柵の設置を検討している。

 同湿原は特別保護地区のため、新たな工作物の設置には条件がある。町全体でも観光客らの安全面への配慮などから銃器捕獲の強化が困難なのが実情で、観光地ならではの対策の難しさに直面する。

 会場では、新芽を食べられたアオキやクロモジの実物や、シカの生態を紹介した写真など約30点を展示。実物大の植生保護柵や同VCが設置するカメラに映ったシカの映像も見られる。同VCは「観光地における被害の現状などを知ってほしい」と話す。

 午前9時〜午後5時。問い合わせは、同VC電話0460(84)9981。

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