異様な五月晴れ

 初夏にちなんだ言葉には、爽やかで心地よい響きがある。青葉を揺らすように吹き渡る、やや強めの風は「青嵐(あおあらし)」。うっすら汗ばむような、わずかな暑さを「薄暑(はくしょ)」。「薄」には「近づく、迫る」の意味があり、夏本番がそこまで来ているのを感じさせる▲今では新暦5月の晴天を指すことが多いが、「五月(さつき)晴れ」はもともと旧暦5月、つまり今時分の梅雨の晴れ間を言う。久しぶりに広がる青空の下、洗濯物はよく乾き、出歩けば薄暑を肌で知るだろう▲五月晴れもまた、夏が近づく頃の爽快さを表す一語…のはずだが、ここ何日かの梅雨の晴れ間は心地よさから程遠い。県内ではきのう、最高気温30度を超えた所もある▲大分県日田市では今年初めて気温35度以上の猛暑日になった。真夏日に猛暑日と、暑さは季節を飛び越え“奇襲”してくる。〈静脈の浮き上り来る酷暑かな〉。横光利一の一句が当てはまるような6月中旬の気候は、異様だろう▲週末から天気は下り坂というが、来週の後半はまた真夏日になると予想される。心にも晴れ間をもたらすはずの「五月晴れ」が今は物憂(ものう)い▲あすは二十四節気の一つ「夏至」で昼間が最も長い頃に当たる。「夏が極まる」というその意味はいつもなら「暦の上」での話だが、今年はその“ことわり”を添えづらい。(徹)

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