大さん橋から世界へ ドラムパフォーマンス「鼓和」

 マーチングパーカッションで華やかな演奏を披露する国内初のドラムパフォーマンス集団「鼓和(コア)−core−」が結成10周年を迎えた。横浜港大さん橋国際客船ターミナル(横浜市中区)で開かれる豪華客船の出入港セレモニーへの出演を重ねることでさまざまなチャンスをつかみ、活動の幅を横浜から全国各地に広げている。

 外国客船「ダイヤモンド・プリンセス」(11万5875トン)が横浜港を起点にしたクルーズに出港した4月30日、鼓和は大さん橋の屋上で歓送演奏を行った。メンバーは30代中心の男女で、そろいの青い制服がよく似合っている。

 トランペットなどの管楽器は用いず、ドラムだけ。一斉に鳴り響かせると、その迫力で大さん橋の木の床も小刻みにリズムを刻んだ。メンバーは周囲に手拍子を求めたり、華麗なスティックさばきを披露したりして、乗船客だけでなく見送りに来た大勢の市民らも一体となって盛り上がった。

 「本来ならばマーチングバンドや鼓笛隊でしか使われることがないマーチングパーカッション。ドラムパフォーマンス集団の先駆けとして、さまざまな舞台で多くの人たちに感動を与えたいと思った」 そう話すリーダーの夏井洋平さん(32)=横浜市戸塚区=は日本でのマーチングバンド部発祥とされる名門、関東学院中高マーチングバンド部OB。米国のチームに1年間加わり、社会人チームにも所属した。夏井さんの思いに賛同する仲間が加わり、2006年に12人で結成した。

 09年の横浜開港150周年記念式典ショー「ヴィジョン!ヨコハマ」(宮本亜門演出)にキャストとして出演。きらびやかな舞台に立った時、「自分たちがやりたかったのはこの世界だ」と気付き、11年にマネジメントプロダクションを設立。プログループとして本格的に活動を始めた。

 大さん橋での演奏に誘われたのはその翌年。大音量が出るマーチングパーカッションは音源環境が整わなくても演奏でき、搬出入が容易というメリットがある。さらに斬新さと華やかさがあり、大勢が集まる屋外イベントにぴったりだった。それ以来、毎年出演を重ねる中で、観客に一体感を持ってもらおうと選曲やパフォーマンスを完成させていった。

 13年からは「飛鳥2」をはじめ「クリスタル・セレニティ」「クリスタル・シンフォニー」など豪華客船の船内で、国内外の客向けにショーを上演するようになった。

 船内では肩に吊るす器具に楽器を取り付けて、舞台を縦横無尽に動いて演技をすることもある。スティックや楽器を光らせる演出など、目で観ても楽しめるパフォーマンスも追究し、これまでにない表現方法を確立しようとしている。

 全国各地での演奏活動や小中高校のマーチングバンド部への指導に慌ただしく駆け回る。夏井さんは「鼓和とは音楽の中心として活躍したいという“核”の意味と、リズムを生み出す太鼓の“鼓”と日本人の持つ美しい“和”の心という思いが混ざり合ったもの。横浜から世界へ、笑顔、希望、夢、感動を届けたい」と意気込んでいる。◇ 結成10周年記念公演を11月19、20の両日、横浜市西区の西公会堂で開く。前売り大人3500円、小人1900円。問い合わせはユニゾン・カンパニー電話070(6462)2543。

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