開発活況、綱島・日吉エリア 居住3千人を想定

 横浜市港北区で計画されている大規模再開発の概要が25日、分かった。住戸数1320戸、居住人口はおよそ3千人を見込む。周辺でも相次ぐマンション開発を受けて、横浜市が敷地の一部を取得し小学校を新設する方針だ。再開発は2018年度にも着工し、20年度の完成を目指す。

 ■18年度着工、小学校も 計画地は東横線日吉駅から南へ徒歩10分程度の綱島街道沿い(箕輪町2丁目)で、大型スーパーや野村総合研究所の跡地を一体的に再開発する。

 開発主体の野村不動産によると、約5・4ヘクタールの敷地内に高さ60メートル、20階建て程度のマンションを建設するほか、物販店や保育施設、フィットネス施設、サービス付き高齢者向け住宅を整備する。居住者以外も利用できる公園や防災広場なども設ける。

 小学校用地として市が取得を予定しているのは南東側の一画(約1ヘクタール)で、野村不と交渉を進めている。既に3月、開発を前提に協力していく趣旨の覚書を締結。市は16年度予算に小学校用地購入費として総額43億円(債務負担行為)を計上している。順調に進めば年度内にも契約を締結する見通し。

 市教委は「周辺には他にもマンション開発計画があり、既存の小学校も満杯。今後数年間にわたり小学生の増加が見込まれているため、対応が必要」と説明する。現段階では約30学級(1学年5クラス程度)規模を計画している。

 ■人口増続く、屈指「港北区」 今後、周辺の地域住民らと調整に入り、詳細な学区域などを詰め、学校の規模を決める。18年度中に着工し、マンションの第1期入居開始と同時期の20年4月の開校を目指している。

 市教委によると、港北区は「今後6年間ずっと児童数が増加する地域」で、現在約1万5千人の小学生が6年後には約1700人増の約1万6700人になるという。

 野村不は、敷地に緑地や空地を増やしつつ、現状の容積率と高さ制限を緩和するために地区計画を定める方針で、本年度中にも都市計画決定の手続きに入る。

 一方、周辺住民からは開発を不安視する声も上がっている。22日に行われた住民説明会では「綱島街道は人と車が非常に混雑していて危険な状況」「朝は高校生や通勤する人が行き交いバスも通る。狭い道路も多く配慮してもらいたい」「この地域に20階建てという大きな建物はなく、相当な圧迫感がある」といった意見や質問が相次いだ。

 ■開発活況 綱島・日吉エリア 相模鉄道と東急電鉄の相互直通運転開始が再延期され、東横線綱島駅近くで建設中の「新綱島駅(仮称)」の開業も3年ほど先送り、2022年となる見通しだ。一方で、綱島駅と日吉駅間の一帯は複数の再開発事業が計画され、綱島街道沿いでは工場やスーパー跡地で大規模再開発がめじろ押し。都市開発や不動産市場に詳しい専門家は「新線開業再延長の影響はさほど大きくないだろう。今後も人口が増え、利便性が高まるエリアで、それに伴い人気も高まっていく」とみている。

 ■新線効果に土地利用転換で進む再開発 新綱島駅(仮称)は綱島駅の東側に新設される地下駅で、相鉄線が乗り入れ、東横線と相互直通運転が始まる。

 新駅を含む周辺地域(約2・7ヘクタール)では横浜市による区画整理事業が計画され、道路が拡張・新設される予定だ。区画整理区域内では再開発準備組合によってマンション(約240戸)を含む複合再開発が計画されている。市はこれに合わせ約千台規模の駐輪場や区民文化センターを整備する方針だ。

 今年3月には綱島街道と綱島駅に挟まれた一画でも別の再開発準備組合が発足、街の再整備に向け機運が高まっている。相次ぐ開発計画の背景には新線開業と、土地利用の用途がかつての工場から住宅・商業へと変化している動向がある。“開発が開発を呼ぶ”連鎖が生まれている。

 不動産経済研究所の松田忠司主任研究員は「新線効果もあって注目が集まっている。もともと大規模物件の供給が少ないエリアで、需要が高い」と言う。

 綱島街道沿いではパナソニック事業所跡地(約3・8ヘクタール)で「綱島サスティナブル・スマートタウン(SST)」と銘打った再開発が進められている。18年春に町開きする予定だ。敷地南側の一画には米IT大手のアップルがアジア最大となる技術開発拠点を建設中で12月にも稼働する。

 さらに約300メートルほど北では野村不動産が約5・4ヘクタールの敷地で居住人口3千人規模の大型住宅の再開発に着手する計画で、近く都市計画手続きに入る。

 浜銀総合研究所の森翔太郎副主任研究員は「相鉄線と東横線の相互直通運転開始が遅れる影響は、綱島・日吉エリアの開発についていえば大きくない。東横線ブランドの人気は底堅いと言っていい。マンション市場全体は悪化しているものの、このエリアは比較的堅調。開発が進むことで、近隣の開発が誘導されていく可能性もある」と話している。

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