障害者スポーツに魅せられて 清水カメラマン、パラ五輪

 障害者のスポーツ写真を撮り続けるプロカメラマンがいる。横浜市旭区在住の清水一二(かずじ)さん(62)。困難な局面から立ち上がり、ひたむきに汗を流す選手たちを応援したい−。そんな思いからさまざまな競技の場へ足を運ぶ。4日には、ブラジル・リオデジャネイロへパラリンピックの取材に出発する。4年後の「東京」を盛り上げるためにも、「多くの人に関心を持ってもらいたい」と話す。

 砲丸を投げる直前の、歯を食いしばった表情。テニスラケットを手に汗をしたたらせる選手。車いすがぶつかり合うバスケットボール。どの写真からも、アスリートの本気が伝わる。

 障害者スポーツとの出合いは、日本大学芸術学部写真学科卒業後、非常勤職員として勤務した厚木市内のリハビリ施設だった。

 車いすバスケの練習を撮影し、その「格好良さ」に魅了された。好きだった自動車レースの面白さと、どこか似ている。人がメカを操る躍動感、健常者が経験することのないスピード、床をこするタイヤの焦げる臭い…。のめり込むのに時間はかからなかった。

 車いすの人たちは大変そうと漠然と思っていたが、「写真家になりたいなら、しっかり勉強しないと」と逆に励まされ、自身の先入観に気付かされた。「あの人たちがいなければ、今の自分はない」。障害者だから被写体に選ぶのではない。スポーツとしての魅力そのものを感じるからだ。写真を発信することで、偏見のない社会の実現を訴えようともしている。

 生まれながらに障害がある人もいれば、事故で身体機能の一部を失った人も見てきた。「選手たちは生きるか死ぬかのどん底からはい上がり、スポーツに向き合っている」。その過酷な過程を乗り越えたからこその輝きが、彼らにある。その一瞬を切り取るためにレンズを向ける。

 リオには22日まで滞在予定。重度脳性まひの人たち向けに開発された「ボッチャ」といったマイナーな競技にも、できる限り足を運ぶつもりだ。

 見据えるのは、2020年の東京パラリンピック。「重要なのは国内外から大勢訪れる障害者を、温かく迎え入れられるか。それができて初めて、東京大会の成功と言える」 「東京」を目指したり、生涯楽しめる競技に出合う障害者が、一人でも多く出てほしいと願っている。

  ◇ ◆ ◇ 清水さんの写真展「知ることが力になる」がJICA横浜(横浜市中区)で開催中。車いすバスケやテニス、陸上などアスリートたちを撮影した約15点を展示している。29日まで。展示についての問い合わせはJICAプラザよこはま電話045(222)7161。

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