横浜に接近する台風、静岡や山梨などを通る時には強風 横浜国大の研究で判明

 横浜に接近する台風がもたらす風の影響は、西側の静岡や山梨、長野付近を通る時に最も大きくなることが、横浜国大の筆保弘徳准教授らの研究で分かった。犠牲者数が戦後最悪となった伊勢湾台風など過去の複数の台風について、その強さ(最大風速)が同じになるように補正した上で数多くの進路パターンを解析したところ、東側の千葉を通過する時や最接近時よりも西側を通る際に強風になりやすいことが判明。同様の試算を全国で進めた結果、台風の位置による風の影響は地域ごとに大きく異なることが浮き彫りになったという。

 筆保准教授らは、高潮が発生し愛知県を中心に5千人以上が犠牲になった1959年の伊勢湾台風や日本への上陸数が史上最多の10個となった2004年の台風6号など、最大風速の強かった過去六つの台風の進路記録を基に、その経路を東西に移動させながら数多くのパターンを試算。ある地点から見て台風がどの位置にあると風の影響が大きくなるかを、半径500キロの円の中で分析した。

 それによると横浜では、台風が西側の静岡や山梨、長野付近を通過する際に風の影響が大きくなり、愛知や岐阜、富山といったやや離れた地点に位置する場合でも、強風になりやすい傾向が明らかになった。同じ手法で小田原について調べると、横浜同様に西側からの風が強く、静岡や山梨、愛知付近に位置する台風からの影響が非常に大きくなることが鮮明になった。

 これに対し、他県の都市は状況が異なっている。日本海側の金沢や松江は横浜や小田原とは反対に、東側通過時に風が強まる傾向が見られた。西日本では、宮崎は西側の熊本付近を通るケースで影響を受けやすく、那覇は台風の位置がどの方角でも強風になることが明らかになった。

 反時計回りの渦になっている台風の風は一般的に進行方向となる東側で強く、西側はやや弱まるとされているが、筆保准教授は今回の結果について「地形の影響が大きい」と分析。「例えば小田原は山に囲まれており、東側通過時の北風は丹沢などに遮られやすいが、西側通過時は海からの南風が入り込みやすい。那覇の場合は沖縄本島が海に囲まれているため、どの方角に台風があっても風が強まるのではないか」とみる。

 筆保准教授は分析結果を踏まえ、「横浜や小田原では、台風の直撃時や東側通過時は安全という意味では決してない。西側を通る台風は、より警戒が必要だと受け止めてほしい。直撃する場合でも、最接近する直前では風が強まるので注意が欠かせない」と強調。一方、雨については「台風ごとに個性があるため、必ずしも位置の影響を受けるものではない」としている。

 また、こうした地域ごとの風の特性を「台風ハザードマップ」として役立てようと、気象情報を提供するコンテンツ配信会社と協力。気象庁の進路予報と連動させたリアルタイムの注意喚起の仕組みづくりも進めている。

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