未使用の複数の点滴にも穴 横浜点滴殺人

 横浜市神奈川区の大口病院で入院患者2人が中毒死した事件で、病棟に残されていた未使用の点滴もゴム栓の保護フィルムに穴が開いていたことが27日、捜査関係者への取材で分かった。穴は注射針で開けたような小さいもので、複数の点滴で見つかった。神奈川署特別捜査本部は、死亡した男性の点滴と同じ手口で、医療に詳しい人物が消毒液を注入させた疑いもあるとみて、内容物の鑑定を進める方針。

 捜査関係者などによると、未使用の点滴は、18日に死亡した男性患者(88)と20日に亡くなった男性患者(88)の病室がある4階のナースステーションに約50袋残されていた。いずれも17日午前に3連休中の使用分として薬剤部から搬入されており、このうち2人以外への使用予定分を含む複数の点滴で、チューブをつなぐゴム栓を保護する透明フィルムに穴が開いていた。

 保護フィルムはゴム栓の抗菌目的で貼られており、通常は使用直前にはがしてチューブを挿入する。一度はがすと貼り直せず、開封済みか分かる仕組みになっている。ゴム栓は点滴使用中に他の薬品を注入する場合などに使われるため収縮性があり、注射針などで刺しても痕跡が目立たないという。

 また、特捜本部によると、司法解剖の結果2人目の中毒死と断定された男性患者は、18日午後5時に心停止が確認されていた。点滴は同日午前に交換されており、午後4時50分ごろ、看護師が心拍数低下を告げるアラームで異変に気付いた。院内には当時3人の女性看護師が勤務していた。

 これまでの調べで、この男性患者2人の体内から検出された界面活性剤は、4階ステーション内の消毒液に含まれるものと同じ殺菌作用の強いタイプだったことも判明。現在、2人目の中毒死と断定された男性患者の点滴の残留物にも界面剤が含まれていないか、鑑定を進めている。

 特捜本部は、点滴の構造を熟知するなど医療器具に詳しい人物が、無施錠のステーション内で保管されていた17日午前から18日午前までの間に、ゴム栓から注射針で消毒液を混入させた可能性があるとみて、詳しく調べている。

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