3カ月間48人死亡→発覚後は死者なし 点滴連続殺人

 横浜市神奈川区の大口病院で入院患者が中毒死した点滴連続殺人事件で、4階病棟では県警の捜査が入った9月20日以降、亡くなった患者がいないことが1日、捜査関係者への取材で分かった。7月1日から事件発覚までの約3カ月間には、被害者の2人を含む計48人が死亡、1日に複数人が亡くなる日もあった。神奈川署特別捜査本部は、事件と関連している可能性もあるとみて、経緯などを調べている。

 特捜本部や病院などによると、20日午前4時55分に4階の港北区の男性(88)が死亡。看護師が点滴内に気泡がある異常に気付き、病院は「異物混入の可能性がある」と通報した。18日に死亡した青葉区の男性(88)も、その後中毒死が判明した。

 同病院では20日以降、9月30日に別の階で入院患者が亡くなったが、4階での死亡例はないという。事件発覚時、同フロアには港北区の男性を含む18人が入院しており、その後一部は転院するなどし、新たな入院患者は受け入れていない。別の階で亡くなった患者は司法解剖して不審な点がないか調べている。

 一方、4階で入院患者が死亡するケースは7月以降に増えており、1日に複数人が亡くなる日も相次いでいた。いずれも病死と診断し、警察に届け出ることはなかった。ただ、遺体の大半は火葬されるなどして残っていないという。

 同病院の高橋洋一院長は死亡者数について「やや多い」との認識を示しつつ、「院内感染を疑って実際に検査したが、問題は見つからなかった」などと説明。症状が重い終末期の高齢患者を多く受け入れている性格上、他病院に比べ死亡率は高いとの見方を示す。

 同病院に入院していた母親(91)が7月に死亡したという男性(63)は「報道を聞いて、母ももしかしたら…と思った。あんなに元気だった母が点滴を受けてから急に亡くなったので病院を疑ってしまう。病院から説明を聞きたい」と話していた。

 港北区の男性と青葉区の男性の体内、港北区の男性の点滴袋からは消毒液などに含まれる界面活性剤の成分を検出。4階ステーションの未使用の点滴約10袋には、ゴム栓の保護フィルムに注射針で刺したような穴が見つかっており、特捜本部は医療に詳しい人物が点滴に注射器で消毒液を混入させた疑いがあるとみて、病院関係者から事情を聴くなどして調べている。

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