等々力、改修どうする サッカーACL、観客席規則厳格化で

 サッカーJ1リーグ・川崎フロンターレのホームスタジアム・等々力陸上競技場(川崎市中原区)に、思わぬ改修問題が持ち上がっている。クラブは今季J1の年間順位3位以内を確定させ、来季のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の出場が濃厚となっているが、アジアサッカー連盟(AFC)が観客席の規則を「背もたれ付きのもの」と厳格化したため、最も盛り上がる1階部分の大半が同大会では使えなくなるためだ。競技場を所有する川崎市は対応に苦慮している。

 同競技場のメインスタンドを除く1階部分には、立ち見6620、背もたれのない3782の計1万402席がある。全2万7495席の4割近くにわたるこのすべてに背もたれを設置しなければ、ACLでの使用は不可能となる。サポーターらでつくる「等々力陸上競技場の全面改修を推進する会」に加え、チームも市に要望を提出している。

 だが問題は複雑だ。ACLのグループステージ初戦は来年2月20日ごろで、工事は短期となる。費用も、背もたれなしの席を造り直すだけでも1億円近く。さらに「立ち見部分に席を設置すれば、同箇所の動員数は半分近く減る」と市等々力緑地再編整備室。クラブとしても、収容人員の大幅減は避けたいところだ。

 さらに、競技場は約79億円をかけた大規模改修を昨年3月に終えたばかり。現在は第2期整備の検討準備中だ。市と協議を続けるクラブ側も「全体像が固まっていないうちに、席だけを先行して整備するのは厳しい」と認識する。

 そもそもACLはJリーグ上位など数チームだけが参加できる大会だ。開催が確約されるのは予選3試合で、しかも基本的に平日夜に行われる。川崎が出場した過去4大会、14試合の平均動員数は1万272人で、「もし1階席が使えなかったとしても観客はおそらく収容しきれる」とクラブ担当者。絶対的に必要な改修と言い切れないのが現実だ。

 川崎市の福田紀彦市長は「フロンターレは市の宝。なんとかしたい」と言うが、競技場がサッカーだけのためにあるわけでもない。例え短期工事、年度途中の予算編成などの問題をクリアしたとしても、Jリーグの半数程度の動員数の試合が3試合…。市長は「二重投資になってもいけないし、難解な連立方程式を解くような問題だ」と苦笑する。

 市は「ゼロ回答はない」としており、今回は1階の一部を改修する暫定措置を取った上で、将来的には第2期整備の中で本格的な整備を検討していく方針だ。市は「近日中にも方向性を発表したい」としている。

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