熱狂席確保へ苦肉策 等々力競技場で川崎市

 サッカーJリーグ・川崎フロンターレのホームスタジアム等々力陸上競技場(川崎市中原区)の1階席の大半がアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の規格外となっていた問題で、川崎市は17日、2階席と1階席の一部を交換することで約千席を確保すると発表した。最も盛り上がる1階の応援ゾーンを確保したいチーム・サポーターの願いを受け入れた市側が「複雑な条件の中でこれしかないという苦肉の策」をひねり出した。

 J1で年間3位以内を決めているフロンターレは来季ACLの出場が濃厚だ。しかし大会を主催するアジアサッカー連盟が競技場の席を「背もたれ付き」と厳格化したため、等々力の全2万7495席のうちバック、サイド両スタンドの立ち見を含む1万402席が使用できなくなる事態となっていた。

 市は暫定措置として、背もたれが付いた2階の1243席と、背もたれがない1階バックスタンドの同数席を約1千万円かけて入れ替えることを決めた。うち1039席を最も盛り上がるホーム側の「Gゾーン」に、残る204席をアウェー側に振り分ける。工事は12月上旬から、チームが予備予選に回ったときの直近の試合となる来年1月31日までに行う。

 同競技場は79億円を投じた大規模改修を昨年3月に終えたばかりで、現在はバック、サイド両スタンドの拡幅を中心とする第2期整備を検討中。その中で席だけを先行して改修することは難しく、本案に落ち着いた。

 費用は背もたれのない全3782席を改修する際の10分の1程度に抑えられた。福田紀彦市長は「二重投資はできない中、必要最低限の対応だと理解してもらえると思う」と話す。

 フロンターレによると、アジアサッカー連盟は11月中旬に競技場を視察予定。クラブの長谷川幸雄・事業部長は「市の対応に非常に感謝している。自治体の協力を得て規格に対応したという姿勢を理解してもらい、できれば(現時点では使えない)バックスタンド中央部分についても連盟と交渉したい」と話した。同クラブのACL出場は12月にも確定する。

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